10月7日の夢(大人びた子供)

 会社にいるが暇なので、ヒマラヤについての本を読んでいる。同僚が「その本は?」と訊いてくるから、「ああ、この企画はつぶれちゃったよ」と真面目な顔で返事をする。

 突然、大先輩の総務部長M氏がにこやかに現れる。もう相当な年齢のはずだ。「お元気そうですねー」とぼくは明るく声をかける。

 会社の別館にある幼稚園で、子供たちがお芝居をしている。お母さんたちがそれを熱心に見守っている。その輪の中に入り、子供たちに話しかけると、意外に大人びた応対をするので驚く。きっとぼくと話したことも、この子たちの成長の糧になるのだろうと、なんだか心強い気がする。

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10月5日の夢(二匹のバッタ)

 市街地とも墓地とも見える場所を歩いている。ふと痛みに気づいて下を見ると、二匹の緑鮮やかなバッタが足に食いついている。取りたいが、通行人が多いので、トイレに入ろうと思う。しかしトイレからは上流マダムが続々と出てくるので、入ろうにも入れない。

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10月3日の夢(名刺がない)

 先輩社員にくっついて得意先を訪問する。先輩が得意先の夫婦(どうやら漁師らしい)に挨拶し、納品を済ませる間、ぼくはただ後ろでにこにこしているだけだ。一応挨拶をしようと鞄の中の名刺を探すが、見つかるのは他人から貰った名刺ばかり。「あいにく名刺を切らしてまして」と型通りの挨拶をしてすまそうとするが、どうやらそんな必要もなさそうだ。無難に頭をぺこぺこさせて、得意先を後にする。

 会社に戻る。まだ社員たちは誰も出社していない。ひとりぼっちのオフィスで自分のデスクに座り、足元の箱の中をごそごそ探る。こないだ100枚名刺を注文したばかりのはずなのに、箱の中には一枚の名刺もない。また注文すればすむことだが、あまりに無駄遣いだと怒られそうだ。

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9月30日の夢(囲碁雑誌の編集部)

 ぼくは囲碁専門誌の編集部にいる。デスクの下に本が積み重ねてあり、それが先輩の席の方にはみださないかが心配だ。なんだか無言で怒られているような気がして、本を急いで引っ込める。

 退社しようとすると、電話がかかってきた。受話器をとると女性の声で「一色さんですね。ソコロフの言葉はいつ書いてくれるのですか」と言う。傍で男の声もしている。ぼくは「うちの雑誌は囲碁の専門誌です。ソコロフの記事は載せられません。第一、いつそんな原稿を書いてくれたのですか。出してほしいなら、今すぐメールで送ってください」と答えて、電話を切る。

 編集部を出ると、納屋のような部屋がある。ドアを開けると黒い子猫が足元にいて、しつこくぼくに飛び掛かってくる。子猫がちびなので、ぼくに被害はないのだが。

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9月26日の夢(心はピーマン)

 ぼくの心はピーマンである。だが、その心のピーマンが汚れているのがいやでしかたがない。それで薬を飲むことにする。この薬を飲むと、時間が経つにつれてどんどんピーマンの内部がきれいになり、進んでそれを切り開こうと思うようになるのだ。実際に切り開いてみると、中はとてもきれいで心の垢はすっかり取り除かれていた。

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9月22日の夢(殺人犯になる)

 都心から離れた緑豊かな研究施設に滞在している。そこでぼくは教授を殺したという罪責感にとらわれているが、現実の記憶は全くない。何食わぬ顔で、別の教授の公開授業に出席している。終わって、一度家へ戻ろうと駅へ行くが、思い直して施設へ戻る。今日はある詩の会合がここで催されるからだ。知った顔、知らない顔の詩人たちが三々五々集まってくる。畳の上でそれぞれ思い思いの格好で寝転んでいる詩人たちに、ぼくはあえて積極的に話しかける。中に殺人事件を捜査しているらしい刑事の姿もあるが、ぼくは「こんにちは」と明るく大胆に挨拶をし、相手も明るく挨拶を返してくれる。階段の途中にコインが何枚か落ちている。ぼくは「円を拾う」と「縁を拾う」の語呂合わせから、それを拾おうとするが、体勢が悪くてうまく行かず、刑事の注意を惹いてしまったのではないかと恐れる。建物の外の川の堤防のような場所にテーブルとベンチが並べられ、そこでカレーライスが提供されている。ぼくは空いている席を探して歩くが見つからず、とうとうテーブルの一番端まで行ってしまう。やっぱりぼくに席はないらしい。

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9月6日の夢(給仕をする社長たち)

 ぼくは広告プロダクションの社員だ。今日はなぜか社員全員が食事に招待されて音楽ホールに来ている。客席の一つ一つに社員たちが腰かけ、いつもはぼくらがぺこぺこしている取引先の社長さんたちが、にこにこしながら給仕をしてくれる。ぼくにも一人の頭の禿げかけた社長さんが「どうぞ」とウィスキーをお酌してくれる。しかし、慣れない所作をしたせいか、彼自身のスーツにお酒がこぼれてしまい、背後で待機していた秘書らしい男性が慌てて着替えに行かせる。テーブルにはおいしそうな御馳走が並んでおり、ぼくは早速それらに箸を伸ばそうとする。

 その途端、ぼくらのチーム・リーダーである初老の男性が立ち上がり、「ちょっと待った! みんなに話があるので、階下へ集まってほしい」と言う。しぶしぶ階下に向かったぼくらにリーダーは驚くべきことを告げる。長年の信頼関係で結ばれていた取引先が契約を一方的に打ち切り、同業他社にすべて仕事を移行させたというのだ。とんでもない裏切りだ。この接待はその罪滅ぼしとして計画されたものに違いない。

 ぼくは会社に戻る車の中から、窓越しに夕暮の空を眺める。見たこともない鳥たちが群れになって都会の空を飛び回っている。これはシャッターチャンスだ。ぼくは車外に出て、鳥たちにカメラを向けるが、なぜかこんな時に限ってシャッターが降りない。隣に乗り合わせた外国人カメラマンが「今日空いている?」と尋ねてくる。とてもフレンドリーな感じだ。ぼくは「明日なら空いているよ」と答える。

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8月25日の夢(洗濯屋になる)

 妻と二人で副業に廉価の洗濯屋を始めた。最初の客はマンションに住むマダムだ。洗濯代を安くしているため、汚れ落としは問題ないが、畳んだりアイロンかけができない。布団カバーを納品に行き、「包装もしないままで申し訳ありません」とマダムに手渡そうとするが、真っ黒な色をした大きな布団カバーは手に余り、どう畳めばよいのかさえ分からない。

 二番目の仕事は鍋の洗い物だ。納品に行って改めて眺めると、底に汚れがこびりついたままだ。その場で懸命に指でこすって拭き取ろうとして焦る。

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8月24日の夢(H氏賞候補になる)

 今年のH氏賞候補になったと言われ、選考会場に出かける。H氏賞はピアノの演奏技術を競うコンクールだ。ぼくは既にH氏賞を受賞しているのだが、あれから随分歳月が過ぎ、みんなぼくのそんなキャリアも忘れているのだろう。ぼくは自分のピアニストとしての技量に自信があるので、余裕綽々で控室に着席する。応援に来てくれたらしい女性がテーブルごしに両手の人差し指一本ずつでハイタッチしてくれる。しかし、ぼくが本当に二度目の受賞をしてしまっても本当に良いものだろうか?……

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8月22日の夢(分別ごみ)

 普段何種類かのゴミを分別して出している中で、二種類のゴミを出さないまま放置していたことに気づく。一つは背の高いきれいな白い袋に詰められたゴミで、「ピンゴミ」と名前がつけられている。もう一つは背の低いやや汚れた袋詰めのゴミだが、こちらには名前がない。

 妻に「今朝はピンゴミの日だから、表に運んで出しておいてね」と頼まれる。妻によれば、ピンゴミは家庭から出る最もハイレベルのゴミのことだという。たとえば過去の美しい思い出などが詰まっているらしい。ぼくは袋の口を閉じていた紐をほどいて、中にシャベルを突っ込み、中の腐葉土のようなものを表に捨てる。はて、ピンゴミの捨て方はこれで良かったのかな?と疑問に思いながら。

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