仙台のコンサート取材が目前に迫っている。その前にみんなでどこかの大きなマンションの一室を掃除に行く。ぼくはゴミ箱の中から拾い上げた立派なスーツを着る。だがそのスーツの背中には真っ白な汚れがあり、それが同僚の服を汚してしまったと、ぼくは非難される。
マンションにはたくさんの部屋があり、そこにさまざまな人形や書物が並んでいる。大量のコケシもある。少しずつ整理し、なんとかきれいに片付けられそうだと思うが、どうやら仙台の取材チームからぼくは外されるらしい。嬉しいような寂しいような気分だ。
仙台のコンサート取材が目前に迫っている。その前にみんなでどこかの大きなマンションの一室を掃除に行く。ぼくはゴミ箱の中から拾い上げた立派なスーツを着る。だがそのスーツの背中には真っ白な汚れがあり、それが同僚の服を汚してしまったと、ぼくは非難される。
マンションにはたくさんの部屋があり、そこにさまざまな人形や書物が並んでいる。大量のコケシもある。少しずつ整理し、なんとかきれいに片付けられそうだと思うが、どうやら仙台の取材チームからぼくは外されるらしい。嬉しいような寂しいような気分だ。
缶詰の蓋を開けてから、もう一度閉めようとする。しかし中から白濁した液体があふれ出して閉められない。むりやり閉めると爆発しそうだ。でも閉めないと液体がこぼれてしまう。このままこの缶の番人をして、一生過ごすことになるかもしれないと不安にかられる。
オフィスで企画書を書き上げる。クライアントのどの担当者にプレゼンすればよいかを確認し、手帖にメモをとる。そこへどやどやと同僚たちが現れて企画会議になる。ぼく一人でユニークな企画を出そうとしていたのに、いつのまにか全社的な平凡な企画になってしまったのが残念だ。
プレゼンのため同僚たちと外に出る。路面は積もった雪が融けかけていて、とても歩きにくい。スニーカーをはいてはいるが慎重に歩いていく。「そういえばぼくが会社を留守にしていた間に、レギュラーの仕事が一つなくなったんだね」とぼくはみんなに聞こうと思うが、その瞬間足元にあいた大きな穴に気をとられ、話すタイミングを失う。このままこの問いは永遠に言わないままになるなと思う。
ぼくは青いジャケットを着ている。我ながら妙におしゃれだなと思う。街を歩いていると女性詩人のHさんに出会う。「私、今〇〇賞を貰ったところ」と言う。肝心なところが聞こえない。「えっ? 何の賞? 合唱コンクール?」と聞き返すと、「違うわよ。詩の賞よ」と言う。しかし周囲では女子高生たちが賑やかにおしゃべりしていて、Hさんの声が聞こえない。
垣根の扉を押して、お店に入る。座敷になっていて、10人ぐらいが座布団で座れるいい雰囲気のお店だ。朗読会に使ったらいいなと思う。いつも大声で元気よく話すHさんなのに、今日は妙に声が小さく、容姿もスリムでおとなしいので変だなと思う。
大きな紙袋を持って会社に戻る。同僚たちにおみやげのお菓子を配ろうと思うが、古くて破れた紙袋しか手元にないので断念する。
隣の席の同僚が「『ピアノの本』の部数が足りませんよ」とつっけんどんに声をかけてくる。驚いて「ぼくのオーダーが間違っていたということ?」と問い返す。「そうよ」と相手は言う。隣席にいたのはやさしい男性だったはずなのに、いつのまに交代したのだろう。怖くて意地悪そうな老女に変わっている。ぼくはしかたなく送付リストをチェックして、寄贈先の人数を減らすことにする。
イベントに妻と出かけ、入場を待つ行列に並ぶ。いったん列を一人で外れ、戻ってくると今度は妻が列を外す。なかなか帰らない妻を待っていると、新しくやってきた客が「並んでいますか」と尋ねる。ぼくは「いえ、人を待っているだけです」と答えて、場所を譲る。
戻ってきた妻が「荷物を持っていてあげるね」と言うので、背中のリュックを彼女に預ける。だが妻はそのまま帰宅してしまったようだ。ぼくも黒い手提げのバッグを持っているものの、それはとても軽い。妻はあんなに重いリュックを自分の分と合わせて二つも持って帰って大丈夫だろうか。妻のことを心配しながら帰途につくと、ビルの屋上で男が一人遠くにある何かを見ている。何を見ているのだろう? 気になって彼のそばに座る席を見つけようとするが、最前列は席をとった人たちの荷物で既にいっぱいである。しかたなくぼくは二列目の席に座る。
倉庫を別の土地に移転しなければならない。一度自宅に帰り、巻き尺を持って飛び出す。現在の倉庫の大きさを実測し、新築する予定の倉庫の設計図に書き込む。今まで視界に入らず、気づかなかった別棟の倉庫もてきぱきと計測することができた。
しかし明日から出張でパリに行かなくてはならない。航空券やホテルの手配を忘れていた。今から旅行代理店に電話すれば大丈夫だろうか。
どことも知れぬ田舎の結婚式に呼ばれている。座敷に座ったところで、お祝儀を持ってこなかったことに気がつく。その場でありあわせの封筒を見つけ、財布からしわしわの五千円札を取り出して押し込む。隣の部屋から「一色さんの〇〇がない」という声が聞こえる。ぼくはすかさず「はーい!」と大声で返事をし、襖を開けると急ごしらえの祝儀袋を手渡す。セーフ!
児童ピアノコンクールの取材に行く。ぼくが到着したときは聴衆席はがらがら。主催者もたいしてお客は集まらないと思っていたらしいが、突然想像を超える沢山の子供たちがどっと後方からなだれ込んできた。彼らは椅子のある一階席には入れないので、両側にある天井桟敷の床に寝そべり、次々とその上に寝そべった子供たちが積み上がって、天井までぎっしりになった。とても危険な状態である。主催者は慌てて子供たちに一階席に降りてもよいと許可した。彼らは一斉に天井桟敷から一階席に飛び降り、最後列のベッドに寝転んでいたぼくの周囲も子供たちでいっぱいになった。彼らの足元からカメラを掘り出し、ステージで開会の挨拶を始めた地元の名士らしい男を撮影するのがやっとである。
会議室のようなところで、ぼくは出席者たちの間を回り、椅子やテーブルの配置に気を配っている。
控え室に戻ると久しぶりに母が現れた。「結婚式は素晴らしかったらしいわね。キスが止まらなかったと聞きましたよ」と言う。するとさっきの会はぼくの結婚式だったのか。「いやいやそんなことはないよ」とぼくは謙遜する。そういえば母がぼくたち夫婦のために、原宿の森英恵ギャラリーのガラス張りのホールを結婚式場として予約していてくれていたっけ。だがぼくは母に反抗して、別の小さな会場に友人たちだけを呼んで結婚式を挙げたのだった。「あの会場はまだキャンセルしていないから、あなたたちで自由に使えばいいわ」と母は言う。予約日は一週間後だ。ぼくは妻に「それなら朗読&コンサートの会をやろう。今すぐ友人たちにメールで招待状を出せば間に合うよ」と提案する。そしてかたわらに立っている妻を抱擁して熱いキスを交わす。
妻の実家にいる。広々とした田園風景の中に母屋と離れが建っている。離れから飼い猫が二匹飛び出してきて、母屋に駆け込んでいく。後を追うが、猫は老いて腎臓が悪いらしく、血尿の痕が続いている。気持ち悪いがその上をスリッパで踏んで母屋に向かう。田園風景の中にすうっと何人かの人物が現れる。白髪のおばあさんやスキンヘッドの青年や若い女性たちだ。彼らもまじえて母屋に上がると、白衣の獣医さんが往診に来てくれている。「猫はもうすぐ死んでしまうんですよね」とぼくは言う。だが医者は「そんなことはない。猫はまだまだ死にません」と笑顔でぼくの心配を打ち消す。妻が二階へ上がっていく。「これからライブをします」という声が聞こえる。「みんな二階へ上がろう」とぼくは言う。
スキンヘッドの若者二人と女性一人と共に、ぼくは雨の舗道を歩いていく。前方に大きな川が見え、道路は鉄橋へと続いている。若者たちは鉄橋のたもとで川へと降りていくが、ぼくはひとりで鉄橋の半ばまで進む。雨が強くなり川も増水してきたので、若者たちがひとあし早く元来た道を戻っていくのが見える。ぼくも急いで踵を返し、彼らの後を追う。川が氾濫したのか、道端のすぐ足元まで泥水が迫ってきた。道路は実家の縁側へとそのまま続いている。縁側の雨戸の外の狭い隙間をぼくは進む。どんどん増水してくるが、あと少しでみんなのいる部屋にたどり着ける。ぼくは夢中で妻の名前を呼ぶ。縁側から外へ乗り出した妻は暗闇の中でぼくの姿が見えないらしい。それでもぼくの声を頼りに片手を伸ばしてくれる。ようやくぼくの手がその手を握りしめる。「助かった!」