王宮の広間で王女と食事をしている。ぼくのテーブルの上には蛆がたかっている。ぼくは恐怖のあまりテーブルをひっくり返す。王女に「うじがたかっている」と言うが、王女は「私のテーブルに蛆はいない」と答える。
洋服ダンスの抽斗を開けるが、そこにぼくの靴下は一足もない。
王宮の広間で王女と食事をしている。ぼくのテーブルの上には蛆がたかっている。ぼくは恐怖のあまりテーブルをひっくり返す。王女に「うじがたかっている」と言うが、王女は「私のテーブルに蛆はいない」と答える。
洋服ダンスの抽斗を開けるが、そこにぼくの靴下は一足もない。
デパートに家人と買い物に行く。家人は荷物や上着をレジ前のテーブルに置いたまま、どこかの売り場へ出かけたままだ。とりあえずカートに山盛りの買い物をレジに通すことにする。レジ係の女性が「袋はご入用ですか」と尋ねるが「要らない」と答え、レジの右奥にあるカウンターで商品をエコバッグに詰める。家人の荷物と合わせるととても一人では持ちきれないなと思う。
場面は変わって、戦後の住宅地の裏道を歩いている。ローラースケートらしいものを足にはいた10歳ぐらいの男の子が滑走してくるが、ぼくの目の前でつるりとスケートが滑ってつんのめり、「うわっ」と声を出すが、なんとか持ちこたえてそのまま滑っていく。空き地のある路地を通り、ぼくは家人と泊まっているホテルに向かう。
ホテルの枕元にはタオルや書類などの束が置かれている。それをまとめて別の場所に移動させるが、その中に水の溜まった家人の自転車用ヘルメットがあったことに気づかなかった。それをうっかり逆さまにしたために、中の水が床にこぼれて水溜まりになっている。とても青く澄んだ水が、ピラミッドのように盛り上がっている。慌ててタオルで拭おうとするが、水を拭き取ることはできない。
そこへ家人が戻ってきた。水の不始末に慌てるが、「デパートにまだ荷物があるよ」と言うと、「そうだった。まず二階に行かないとね」と答える。ぼくらは急いでいっしょにデパートに戻ることにする。
アメリカの地方都市で行われる有名な映画祭の会場にまぎれこむ。映画はスクリーンではなく、会場の空間そのものに投影されている。青黒い夕暮の田園風景の中を日本人の少年と父親とが右手の方角に連れ立って帰っていくシーンが観客の頭越しに見える。すると左手の方から紙飛行機とも吹き矢ともつかないものが音もなくいくつも飛んでくる。よく見るとそれは鳩の形をしている。父親はその襲撃から少年を守ろうと、観客たちのいる側に急いで避けるが、間に合わず一羽の鳩が少年の左肩に突き刺さる。そして鳩は少年の背中で激しくブランコか振り子のように躍り上がる。そこまで映画を観たところでぼくは立ち上がり、後方出口から会場を出ようと歩き出す。観客のアメリカ人たちがぎっしり座る丸テーブルがたくさんあり、その隙間を縫って歩くのは容易ではない。だがなんとか出口にたどりつく。守衛をしていた女性係員が英語でぼくに声をかける。多分「一度退出すると再入場できませんよ」と言ったのだろう。ぼくはドアを指差して「出口!」とひとこと言い、躊躇なく外に出る。そこからまっすぐ細い道が前方に続いているが、すぐに大きな川らしいものに突き当たる。川に沿って左右に交通量の多い幹線道路が伸びている。これを右に行けば、日本にあるぼくの自宅に帰れるはずだとぼくは確信する。
今日は自宅で詩の研究会を開く日だ。自宅には既に女性と男性数人の参加者が集まっている。ぼくは空腹を覚えたので開会前に買い出しに行きたいと提案する。若い男子学生三名が賛成して、ぼくといっしょに行くと言ってくれる。
途中で二人が先に行き、T大生一人とぼくとが遅れてしまう。彼はぼくを道の真ん中にあるベンチに座らせ、話を始める。親しげに話すうち、なんだか様子が険悪になり、ぼくは彼から逃れようと一目散に駆け出す。後から彼が追ってくる。ぼくたち二人が走っているのは地面が高架になっている場所で、あと一歩で地表へ降りる階段だ。下には警察官の姿がある。ぼくは警官に助けを求めようとするが、回り込んだ学生に先を越され、警官に親しそうに話しかけてそのまま逃げようとする。だが警官は事情を察して、学生をつかまえてくれる。
やれやれ、とんだ目にあった。早く帰宅しなければと思い、ぼくは自宅への道を急ぐ。腕時計を見ると、幸いまだ30分しか経っていない。自宅に通じるエレベーターに乗り込もうとすると、裕福そうなアフリカ系外国人の家族がいっしょに乗ってくる。彼らは傍若無人で、ぼくに降りる階のボタンを押させない。しかたなくぼくはもう一度一階までエレリペーターで降り、もう一度自宅への上昇を試みる。
会社にいる。会社の前にも、またその内部にも大きな水溜まりができている。それはぼくの心のように汚い。「社内の床もひどく散らかっている」と女子社員がぼくを非難する。「それはぼくが今掃除をしている途中だからだ」とぼくは反駁する。
初老の女性取締役が会社の外に出てきて、「では、この問題を解決するために、三人の志願者を募集します」と言う。それに応じて手を挙げたのは二人の中高年の男性社員だ。「同世代の人で、もう一人いませんか?」と取締役が言うので、ぼくも手を挙げる。ぼくら志願者三人は汚水の水溜まりのほとりで立ち話を始める。だが雨が降り出し、ぼく以外の二人はどこかに行ってしまう。てっきり社内の水溜まりの方へ行ったのだろうと思い、ぼくも中に入るが二人の姿はどこにもない。
社員たちの中に若い女性が一人いて、ぼくに何かを語りかける。しかし声が聞き取れないので、ぼくは思わず彼女に近づいていく。それを察したのだろう。彼女の方から「いつも私の声が小さいから聞こえないのね。ごめんなさい」と謝ってくれたので、自分の耳が遠くなったのではないことに、ぼくはほっとする。
大学の詩のサークルの同僚だったHくんと50数年ぶりに再会する約束で新幹線に乗っている。車両の中で振り返ると、列車の後ろから猛スピードでオートバイが追いかけてくる。今にも衝突しそうだ。息をのんで乗客たちが見つめるうち、警察が何か手を打ったようだ。オートバイから二つの車輪が外れて転がり出し、オートバイは見る間に後退して視界から消え失せる。同時に列車の後ろを映していたスクリーンも消えて、何事もなかったように、新幹線は目的地の駅にすべりこんだ。
Hくんと待ち合わせていたのは、大河の中洲の砂地と草地が交互に点在する川原だ。約束の時間に行くと、Hくんともう一人の男が草の上に寝転んでいる。見ると、かつてのアイドル御三家の一人で、最近芸能活動50周年を迎えたG・Hである。そういえばHくんは昔からG・Hと親友だったのだ。
ぼくはHくんに「お久しぶり!」と声をかけるが、さすがにG・Hに気安く挨拶するのはためらわれて黙っている。しかしG・Hはぼくが空腹であることに気づくと、すぐにそこを立ち去る。そして大きなお椀いっぱいに錦糸卵をちりばめた手作りのスープを持って現れ、ぼくに食べるようにと勧めてくれた。とてもおいしい。
ぼくはHくんに「ぼくはHくんとの思い出は鮮明なんだけど、実はHくんがどういう人かよく知らないんだ」と話しかけるが、気づくとそばにいるのはG・Hだけで、Hくんの姿が見当たらない。見回すと周囲は大平原で、点在する林の間に牧草を食べる牛たちの姿があるが、Hくんはどこにもいない。G・Hも「Hくんはどこへ行ったんだろうね」と言う。
最近はなんでも便利になって、一つ一つの食材が本の栞のようなカードになっている。今日は親子どんぶりだ。家人と「おいしいね」と言い合いながら、食べているが、どんぶりの中に卵のカードが見当たらない。探してみると、そのカードだけが床に落ちていた。
田舎にある古い大きな家の、玄関に一番近い部屋を借りて暮らし始める。家主に明細表を出すように言われるが、書こうとしても紙が大きすぎたり小さすぎたり、定規で引いているのにぐにゃぐにゃの線しか引けなかったり、どうしても作ることができない。ご用聞きが集金に来るまでに作らなければいけないのに、ちっとも出来上がらないので焦りまくる。
自分の薬のデータを収めたCD-ROMのコピーをしたいと病院のロビーをうろうろしている。ロビーにぽつんと置かれたデスクに座った男性職員がいたので、「これをコピーしていただけませんか」と声をかけてみる。意外にあっさりと「いいですよ」と引き受けてくれた。終わると「ROMのラベルのカラーは何色にしましょうか」と言うので「青色でお願いします」と答える。すると「青色は間違えやすいです。黄色にしておきますよ」と親切に黄色のラベルまで貼ったROMのケースを渡してくれる。ぼくはお礼を言って、お金を渡すべきかどうか迷うが、それはあんまりだと思い直し、「いずれお礼をさせていただきますね」と言い、「ではこれで失礼します」と立ち去ろうとする。
意外なことに、男は「自分ももう帰るところですから」と言って、ぼくについてきた。外は風雨が激しく、駅の周りは帰宅を急ぐ人々でいっぱいだ。空を見上げると雲の流れが速い。ぼくは「台風が来ていますね」と彼に言う。彼は「ではどこかで休みましょうか」と言って、周辺の商店街を物色し始める。飲食店を探しているのだと思うが、適当なところはなさそうだ。さらに彼は暗い木造階段を上がり、無人の店舗のドアの破れ目に指先を突っ込んで穴を大きくすると、目を当てて中を覗き込む。ぼくは当惑して下から見上げるだけだ。「場合によってはここでもいいですか」と彼がぼくに問いかけたとたん、ぼくは不穏なものを感じて一目散に逃げ出し、後ろも振り返らずに全力疾走する。せめてガードを越えて駅の向こう側にたどりつければと思うが、線路を越える道がなかなか見つからない。
ぼくは車椅子生活になってしまった。だが元気に会社の中を車椅子で駆け回っている。同僚たちが「大変ですね」と声をかけてくるが、「大丈夫です」と明るく返事をする。だが急いでいて、あちこちで植木鉢などをひっくり返してしまう。慌ててあり合わせの道具でこぼれた土をすくって元に戻す。
タクシーに乗っている。走っているのは爽やかな海辺で、ぼくは座席で言葉遊びをしたり、フォークソングを歌ったりしてすっかりご機嫌だ。目的地に到着した。タクシー代を支払わなければならないなとぼんやり考えていて、「これ、今日の分です」という運転手の声に我に返る。運転手がぼくの方に腕を伸ばし、紙に包んだ千円札二枚と百円玉二枚を渡そうとしている。「あれっ、ぼくの方が料金を払うんでしょ?」と言うと、「あっ、そうでしたね」と運転手は頭をかく。「ぼくも朝、あなたのタクシーに乗れると、気持ちよく一日を始められるんですよ」と声をかけてやると、運転手も嬉しそうだ。