1 月2日の夢(縫いぐるみを被った詩人)

 妻と二人で立ったままテレビを見ている。何か大きな事件が起こり、現場中継が行われている。男女のキャスターがニュースショー形式で面白おかしくスタジオから「ただいま現場に正体不明の車が近づいています」とアナウンスする。だが画面に映し出されたのは真っ赤なコカコーラの車だった。この事件の犯人像について、識者が何人か登場してコメントするという。「最初に詩人にお願いします」とキャスターが言う。誰だろう?と妻とぼくはテレビに近付いて目を凝らす。テレビ画面は点いたり消えたりする。消えたときには、そこにはテレビはなく、ただの白い壁になる。画面に現れたのは頭からすっぽりとドナルドダックの着ぐるみを被り、顔にあいた二つの穴から目だけ出した男だった。画面には「詩人」とだけテロップが出ている。ぼくはその高い声でしゃべる男が誰なのか、穴の向こうの目だけで推理しようとするが、分からない。
 トイレのドアを開ける。奥にある開けっ放しのドアの外から激しく雨が降りこんでおり、ぼくは妻に「雨が降ってるよ」と叫ぶ。それから「あれっ? 便器がないよ」と言う。妻はやってきて「ほら、またそんなことを言う。そこにあるじゃないの」と指さす。本当だ。ちゃんと部屋の手前に便器があった。「そうか。ないのは浴槽の方だった」とぼくが言う。だが、浴槽はさらにその手前にあった。

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12月30日の夢(父のパソコン)

 父が巨大なパソコンを操りながら、ぼくに「そんな写真ばかり撮っていると、いつまで経ってもいい写真が撮れないぞ」と、後ろ向きのままで言う。巨大なパソコンにはいくつかのモニターがあり、比較的上方にある小型モニターに、ぼくが最近撮影した赤い花のアップが写っている。確かに花をアップしきれていない中途半端な構図だ。ぼくは「ぼくだって10枚撮って、1~2枚しかこんな写真は撮りませんよ」と反論する。父のパソコンは手元に大画面のモニターがあり、そこから一メートルほど奥にある中画面のモニターと本体との奥行きを自由に深くしたり、画面を360度回転させたりもできる。まさに最新式のパソコンである。
 ぼくは父の後姿に「写真の編集ですか?」と声をかける。父は「そうだ」と答える。ぼくは知っている。ぼくが今専門的に研究しているテーマは「父から見た息子という関係」、そして父が研究しているテーマは「息子から見た父という関係」。互いに相手と自分の関係を心理分析し合っているのだ。
 玄関の開く音がはしたので出てみると、小学校低学年の女の子が土間に入り込んでいる。おもちゃで遊んでいるうち、そのおもちゃにつながる黒い麻糸が、脱ぎ散らかされた靴やつっかけの間にからまってしまった。ぼくは彼女の存在には気づかないようなふりをして、麻糸をそっと解こうとするが、ますますこんぐらかってしまい、「あれっ?」と声を出す。

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12月29日の夢(ポエフェス)

 毎夏恒例の大規模なサマー・ポエトリー・フェスティバルが六本木で行われる。六本木は播州平野のような広大な緑の大地だ。ここで日本を代表する詩人たちがそれぞれの持ち時間を使い、五時間にわたるパフォーマンスを繰り広げるのだ。すぐそばでお化粧のパフをはたきながら、女性詩人のNが「まだ開演まで時間があるわよね」と言っている。そうだ、まだ時間があるので、準備のため四谷まで戻ろうと思う。
 四谷は欅の緑の葉が風に揺れる雑木林になっている。集合時間の3時15分までに戻ろうと、ぼくはバス停に行く。余裕で戻れると思ったのだが、そこはバス停ではなく、観光バスの停車場に過ぎなかった。旗を持ったガイドの周りに大勢の観光客が集まっているだけだ。時計を見ると、もう集合時間を少し過ぎている。慌てて(記憶が飛んでいる)なんとか会場に戻るが、既に出演者へのプレゼンテーションは終わっており、ぼくは何時ごろ何分朗読をすればいいのか分からない。うろうろしているとすれ違った男性が「服が切られているよ」と注意してくれる。見ると、ぼくの着ているコートもスーツもナイフで切られたらしく、ずたずたになっている。歩いているうちに、服が脱げて半裸になっていくのを、ぼくは必死で食い止めようとする。
 トイレに入る。トイレは石段の上にあり、トイレの床はごろごろした石ころが敷き詰められ、立っているのも不安定だ。男たちと並んで用を足すが、ぼくは片足靴が脱げて裸足なので、他人のおしっこがかかるのではないかと気が気でない。おまけに列に割り込んで、卑猥なことをする男もいて、みんなが一斉に動揺する。
 ようやくトイレの人込みから出ると、ロビーで出演者たちが紋付き袴姿で椅子に座った男性の前にひざまずいて挨拶している。ぼくも真似をして、ひざまずきながら「ぼくの出演は何時ごろで、誰の後になりますか」と尋ねる。
 気がつくと、元カノのOがすぐそばにいて、燃えるような怒りの目でぼくを見ている。ぼくはそれを無視して自分の出演するステージへと進んでいく。

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12月22日の夢(記者と同行)

 食事に行こうと会社を出ると、一人の男が近づいてきて、マスコミの記者だと自己紹介する。そして、ぼくについてくるよう促す。ぼくはお腹が減っていたので、食事をしながら後についていく。昔風の商家のような造りの建物に案内される。室内には数人の男性がいる。記者がずかずか入っていくので、ぼくも食事の途中の皿を地面に置いて、慌てて記者を追う。記者は男たちにぼくを「フェイスブックでご存じと思いますが……」と紹介する。ぼくはこの記者を知らないが、彼はぼくをSNSで見かけているのかもしれない。記者が男たちと話している間、ぼくは奥へ行き、そこに置かれている珍しい本や機械をしげしげ眺める。とても興味深いものがいっぱいでわくわくする。記者はこれをぼくに見せたかったのだろうか。

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12月19日の夢(四畳半で野球)

 雨なので部屋の中で野球をすることになる。試合が行われるのは四畳半の部屋。部屋の中は内野で左右の壁にボールが当たればファウル、奥の壁に当たればホームラン。それまで弱弱しい太っちょだと思っていた少年が実はエースピッチャーだったので驚く。
 そのピッチャーの左ひざに二つの透明な風船のようなものがふくらんできた。それが治るまで試合は中断。ぼくの左ひざにもそれがふくらみ、かゆくてたまらない。つぶそうと思うがつぶせない。やがて風船はぼくの口の中にも生えてきた。これなら歯で噛み潰せる。

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12月18日の夢(お風呂の中の弁当)

 アルマイトの弁当箱をバスルームの湯船の隣に隠して、ドアを閉める。お風呂にお湯を張り続けたまま外出し、戻ってきてバスルームのドアを開ける。お風呂は煮えたぎり、渦を巻いて沸き立っていた。弁当箱の蓋はきちんと閉まっているのに、中のおかずがお風呂の中で渦に巻かれながら煮えている。

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12月11日の夢(眠りの棒グラフ)

 現代では睡眠は棒グラフとして表示される。その棒グラフになった眠りは売買されている。妻は自分の眠りは買ってもらえないと悲しんでいた。ある日、妻の眠りを買いたいというメールが届いた。妻はそれを聞いて、とても喜んだ。

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12月9日の夢(ポータブルプレーヤー)

 丘の上の緑の芝生の上に、沢山の人たちが物を並べている。仕事でそんなことをしているのだ。周りの中年男性たちがぼくをできないやつと陰口をたたいているのが分かる。ぼくもみんなに混じって、空いている場所にポータブルのレコードプレーヤーを並べる。これは実際に音を出せるので、みんなの役に立てるだろうと自分を励ます。しかし、ターンテーブルの中心軸に通す円形のゴムがない。探しに行くが、見つかったのは麺類やパスタをゆでるときに使う金網のようなもの(何と呼ぶのだろう?)。これで代用しようと思うが、網の底に一匹の生きた蜘蛛が入っている。追い出そうとしても、指で摘まみ出そうとしてもできない。ふと気づいて割り箸を取り出し、中をかき混ぜると蜘蛛は粉みじんになって、蕎麦のかけらのようなものになる。なんだ、これでいいじゃないかと思う。しかし、蜘蛛の死体が粉々になったかけらはとても気持ちが悪い。

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12月6日の夢(毎日が文化祭)

 期末テストが終わったので、もう教室には教師たちもやってこない。生徒たちは各教室から机や椅子を取り去り、自由に木材や紙を使って自分たちの作品を制作中。まるで毎日が文化祭だ。ぼくのクラスは廊下の右側に並ぶ教室の奥から二番目のはずだが、そこもペンキを塗られた製作途中の作品で足の踏み場もない。
 しかたなく校外に出る。雨の中、運河沿いの道を傘を差して歩いていると、足元に毛虫のようなものが落ちている。いや、よく見ると、それは練り出された茶色の絵の具の一滴なのかもしれない。気づくと、ぼくの手の甲にもそれがくっついている。うえっ、汚い! と思い、急いで拭い取ろうとするが、傘を差しているのでなかなか拭き取れない。
 教室に戻る。三人掛けの長いデスクの真ん中の席に座り、カードケースを開けて、詩人のN氏に電話しようとする。ケースの中の名刺のようなカードを指で押すだけで自動的に電話がつながるのだ。隣に座った女生徒が「ねえ、Nさんって威張っているの?」と訊く。ぼくは「うーん、そうだよ」と生返事をしながら、N氏のカードを探し続けるが、どうしても見つからない。

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12月5日の夢(エレベーターで行く異世界)

 会社が夏休みに入ったのに、忙しくてたまらない。オフィスに泊まり込もうと思う。しかし二階のぼくのデスクのある部屋に行くと、そこは既に若手社員たちに占領されていて、ぼくの寝る余地がない。ぼくは憤然として一階の社長室に怒鳴り込もうとエレベーターに乗る。けれど、そのエレベーターは下ではなく上へ行くものだった。えっ、この建物に三階があったっけ?! と思う間もなく、三階のドアが開いた。驚いたことに、そこには緑の大草原と遠くの森、真っ青な空が広がっていた。四階に行ってみる。そこにはまた別の異世界風景があった。
 会社の二階のエレベーターホールにいる。工事現場の木製足場のような不安定な場所。ぼくは手に二種類の薬壜を持っているが、その二つとも落としてしまう。一つはすぐ足元にあったが、もう一つは床板の隙間から下の階に落っことしてしまった。一階に降り、海水浴場の砂浜のようなエレベーターホールを探すが、どうしても見つからない。

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