12月22日の夢(ヴァーチャルな海)

 会社で仕事をしている。午後1時にクライアントと合流して、ユーザー取材に出かける。しかし、取材先の家では4時に出直すように言われ、いったん会社に戻ることにする。湘南の海が目の前に広がっている。海はそのままでも美しいと思うが、デジタル・プロジェクションで太陽にきらめくエメラルド・グリーンの海が、実在の海の上に合成されている。波打ち際数十センチのあたりまでは本物の海なのだが、いくらじっと見つめても合成の境界線が分からない。ヴァーチャルの海の浅瀬には緑色の海藻がからまって浮いている。沖には船が航海し、右手からは若い男性たちが数人、並んで泳いでくる。彼らはヴァーチャルなのかリアルなのか分からないが、海は色彩こそ緑に変えられているものの、とても自然だ。
 会社に戻り、掃除などをしながらふと腕時計を見ると、3時だ。まだ時間があると思い、次に見るとやっぱり3時だ。見直すと、時計は止まっている。実際はもう5時ぐらいなのだろう。取材に戻る約束の時間をとっくに過ぎている。でも、これは夢なのだから戻らなくていいと思うものの、罪悪感にかられる。

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12月19日の夢(走るオフィス)

 会社が改装されることになり、オフィスの配置換えも行われることになった。真ん中の部屋には三台ベッドが置かれ、仮眠室として整備される。ついでにビル全体が列車になり、線路が廃止されたあとの跡地を走ることができるようになった。窓のある側だけでなく、内部にある部屋の壁にも大型スクリーンが設置され、どの部屋も窓からの疾走する風景を楽しめる。街中どこでもいいわけではないが、廃線の跡地なら自由に走ってよいのだという。廃線の行き止まりには確か郵便局があったはずだが、実際に列車オフィスに乗って行ってみると見当たらない。きっと廃止されてしまったのだろう。6時の退社時間を過ぎたが、列車オフィスが面白いので、そのまま残業することにする。
 同僚の初老の男性の夫人が家出してしまったと嘆いている。孤独になった男を同僚たちがみんなで慰める。向かいのビルのベランダから、クレーンで空中に身を乗り出し、励ましの演説をする男もいる。その甲斐あって、夫人が車で戻って来た。会社全体が歓喜に包まれる。

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12月14日の夢(飛行機に乗り遅れる)

 仕事で会社のメンバーの八時発の飛行機でパリに発つ予定だ。しかし、まだ15分ほど余裕があるので、近くの商店を回り、品定めをしながら食べ物を買う。買い終わって腕時計を見ると、8時5分だった。

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12月13日の夢(詩人たちの来訪)

 夜、玄関のガラス戸の向こうに、人気詩人のN氏をはじめとする多くの詩人たちが近づいてくるのが見える。葬式か何かの流れで、みんなで立ち寄ってくれたらしいが、彼ら自身が死者であるような気もする。玄関戸を開けて招き入れ、皆で部屋に入って雑談する。ぼくは「前にもこんなことがありましたね」とN氏に言う。妻が自分の作った小詩集の値段一覧表を急いでつくり、「こんなものでいいかしら」とぼくに尋ねる。彼らにそれらの小詩集を特別価格で買ってもらうつもりらしい。ぼくは「さあね」と答えながら、自分も何か売るものがないかと、書棚を見るが、最近同人誌に入っていないせいもあって、何も見当たらない。

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12月7日の夢(赤い靴)

 大きな企業のホテルのように豪華な正面玄関への大階段を降りてきたところで、自分がはいてきた真っ赤な靴をどこかに置き忘れ、靴下のままで歩いていることに気づいた。目の覚めるような真っ赤なスニーカーをはいてきたはずなのに。引き返すが、自分の靴は見つからない。けれども、大階段の下に沢山の靴が積み上げられていて、そこに真っ赤なスニーカーもいくつかある。あの一つを黙って借りて帰ればよいのではないかと、ふと思いついた。

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12月3日の夢(空飛ぶピアノと寂しいバス)

 会社で忙しく働いていると、電話が鳴った。ぼくの取引先の中国人だ。名前すら教えてくれない秘密のクライアントである。その男から仕事の指示書が送られてきた。「〇月〇日にアモイで取材が可能か?」と書かれているが、どんな取材かは分からない。目の前に座っている上司に確認すると、「そういえばアモイには昔NHK職員だった男がいて、腹話術などいろいろ特殊な能力を持っているらしいよ」と言う。同僚が鉛筆ラフを見せてくれる。あるピアノメーカーからMXというアップライトピアノが発売され、その広告の企画らしい。なんとヘリコプターがピアノを空から運んでくる設定だ。実際にはピアノユーザーの家庭訪問取材になるだろうなと思う。だが一か月半の中国取材となると、切れかけたぼくのパスポートが無効になってしまいそうだ。
 退社して電車に乗る。女性がドアを開けっぱなしにして乗っているので、落ちないかとはらはらする。駅に着き、バスに乗り換える。バスの中はとても広くて、小さなホールのようだ。だが、長椅子が三脚ほどばらばらに置かれているだけで、がらんとしている。今度走り始めた新型のバスで、まだ一台しかないのだという。乗客はぼくのほかに男女が一名ずつ。だが、三人とも離れて座ったので、とてもさびしい感じだ。

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11月30日の夢(洪水)

 地面に生首が落ちているように見えたのは、丘のてっぺんの草地で男性が穴を掘っていて、穴の中にいる男性の首だけが地面に突き出しているからだった。その場所を舞台に近くの人たちが集まり、ちょっとしたイベントが始まった。ぼくは「住んでいるのがこの近くなので……」ということで、司会を仰せつかる。
 起きると、知らないうちに洪水が起きていて、あたりが床上浸水している。どの家も配達された新聞がびしょ濡れだが、配達された場所に置かれている。中には「新聞赤旗」も混じっている。それなのに我が家の取っている朝日新聞だけが流されてしまって見当たらない。どこかの家の奥さんが「あら、注文した新聞が届いたわね」と言う。みんな再配達を頼んだのだろうか。我が家は洪水で家族三人が一室に閉じ込められてしまい、朝食をとりながら「洪水になっていたなんて、全然気づかなかったねー」とみんなで話し合う。

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11月26日の夢(一度しか来ないバス)

 バスに乗って取材に行こうとして、山のほとりの十字路に立っている。この道は70年前、ぼくが幼稚園に通うための通学路だった。このバスに乗るには、お金は要らない。けれど、夢から覚めたら思い出すことのできない〇を沢山持っている必要がある。けれど、一日待っても停留所にバスはやってこない。日暮れごろ、ようやく山向こうからバスがやってきたのが見える。だが、ぼくはテレビカメラもノートも取材用具を何もかも忘れてきたことに気づく。

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11月23日の夢(現代詩ゼミ)

 軽い風邪をひいて、自宅の部屋で寝ている。明日は現代詩ゼミなので、それに出演する講師二人が打ち合わせに隣室に来ているが、ぼくは病気と称して応対に出ず、ドアを閉めて家族とご飯を食べる。
 翌日、ゼミの会場に向かう途中の広場で、やはり講師として来てくれた女性詩人のNさんとばったり会う。Nさんは突如、街路に一匹の猫となって身を投げ出し、「お久しぶり!」と叫ぶ。やがて人間に戻って起き上がったNさんは、ぼくが見上げるほどの身長である。あれれっ、こんな大柄な女性だったっけ? 彼女が共演のあさのあつこと打ち合わせに喫茶店に入っていく後姿に、ぼくは「Nさん、頑張れ!」と声をかける。
 さて、会場でゼミが始まったが、出演者を除けば純粋な聴衆は10名ほどしかおらず、低調である。ぼくの主催者としての挨拶の後、第一部のバンド演奏が始まる。オーケストラのように見えるが、楽器はすべて紙で作った張りぼてだ。なかなか面白い企画だったが、終わった後の楽屋でバンドリーダーの老人が女性担当者に「楽器の制作費が沢山かかったので、経費を支払え」と迫る。そんな話は聞いていないので、ぼくは「後でネットのオークションに楽器を出して、その売り上げをあなたが取ればいいじゃないか」と言って、引き下がらせる。

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11月22日の夢(入社試験)

 ぼくが十年以上前まで在籍していたS社の本社ビル。帰社したぼくは驚いた。今朝、出版部が新聞に出した二名の入社募集広告に応えて、二百名ほどの受験生が殺到し、ビルの中が彼らに占領されてしまっていたのだ。出版部の面接会場や待機場所に使うため、ぼくの所属する広告部はオフィスを全部明け渡してしまったらしい。元の自分のオフィスにはコードを抜かれた沢山のiMacが片隅に積み上げられているだけ。同僚は一人も見当たらない。忙しい仕事にすぐにでも取り掛かりたいのに、どうしたらいいのだろう?
 部屋の外に出ると、階段も受験生たちにあふれていて、中には和服のお母さんに引率された明らかにオタクと思われる男の姿もある。母親連れの受験生など全員即刻受験資格なしにすればよいと、ぼくは悪態をつく。
 ぼくはiPadを取り出して、同僚に連絡をとろうとする。だが、iPadの待ち受け画面は知らない他社のホームページに固定されてしまっていて、そこすら抜け出すことができない。見慣れたはずのS社ビルがどんどん見知らぬビルに見えてくる。もしかしたら、ここはS社ビルではなく、ぼくがビルを取り違えただけではないのか。ぼくはエレベーターに乗り込むがその中も応募者たちでいっぱいだ。急いで階数表示ボタンを押すが、エレベーターはびくとも動かない。「ちょっとごめんなさいよ!」とぼくは応募者や母親たちを押しのけてエレベーターを飛び出すが、ますます迷宮の世界に迷い込むばかりだ。

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