相澤正一郎さんから「パルナッソスへの旅」H氏賞受賞の知らせが届き、私も本当にうれしかった。 詩集の表紙に使っていただいた絵は、「かれらのなかに土があった」という題で、パウル・ツエランの詩から引用した。 4年前の冬、ポーランドのクラコフに行った時、樹木の高さに驚いた。 日本の樹の2〜3倍もあろうかという高さの樹が、枝をからめ、コケを纏い、ー10度の冷気の中に立っていた。 一時は地図上から消えたというポーランドの複雑な歴史と、我々人間の愚かな行いを、ずっと見つめてきたのか、と私は頭の下がるような気持ちで樹木の間を歩き、樹皮に触れてみた。 冬日は差してはいたが、とても遠く感じた。
詩集ができあがった時、「書肆山田」の印刷がすばらしく、ほぼ原画どおりの空気でありがたかった。 それ以上に、相澤さんの「言葉とご自身との間にある距離感」が好きだった。 私たちはもう事物に対し、触れてはいても、本当には触れていない。 「今朝もお鍋のスープをかきまわし、出がけにちょっとけつまづき、、、」 でも私はどこへ行こうとしているのか。
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