6月の茶色の朝展

「茶色の朝」(フランク・パブロフ 作/ヴィンセント・ギャロ 絵/藤本一勇 訳/大月書店)という本をご存じだろうか? フランスで2003年のベストセラーになった短い物語だ。 哲学者、高橋哲哉氏は、この物語に寄せたメッセージの中で、次ぎのように述べている。
「『ファシズム』や『全体主義』という用語を厳密に適用できるかどうかは別としても、現代日本社会には、それらにつながる排外主義、差別主義、国家主義への強い傾向が確実に存在します。」
確かにそのとおりだ。 昨年暮れには、憲法と共に、戦後日本社会の根幹となった教育基本法が改正されてしまった。 私は、法律、歴史、教育、どの分野の知識も未熟で、常日頃は、絵のこと以外あまり考えていないのに、あの時は「これはいけない!」と思い、何かに突き動かされるように銀座のデモに加わった。 が、それ以上に何かできたわけでもなく、教育の主体は国民から国家へと移ってしまい、私はまたアトリエの毎日にもどってしまった。
「茶色の朝」への高橋氏のメッセージには、「私たち『ふつうの人びと』にとって最大の問題は. . . . . 社会のなかにファシズムや全体主義につうじる現象が現れた時、それらに驚きや疑問や違和感を感じながらも、さまざまな理由から、それらをやり過ごしてしまうことにある. . . . 」とあった。 後ろめたい限りだ。
そんな折、富士吉田市の画廊「ナノリウム」が「やり過ごさないで考え続けること」という思いを込めて、「6月の茶色の朝展」を企画し、参加のお誘いを頂いた。 矢部史朗氏、藤本光三氏と井上 直のコラボレーション。 矢部氏はヤスリを使った作品、藤本氏は蝋燭を使った作品と伺っている。 私は樹木のシリーズを展示させていただく。
私の絵は「現代社会における人間と人間たちの物語」を目指してはいるけれども、直接、「ファシズムへの抵抗」を意図して描かれたものではない。 しかし、このような機会を頂き、私自身も現代の日本社会における「ファシズム」への流れについて、もう一度考えてみたい。 
「ナノリウム」は樹木に囲まれた、すてきな画廊で、晴れていれば富士山が見える。 雨の日は周囲の樹木が一斉に音をたてる。 6月のご予定に加えていただければ幸せです。

6月の茶色の朝展


6月8日(金)〜26日(火)


11:00am〜8:00pm (木曜定休)



京王バス 新宿〜富士急ハイランドの時刻表
http://www.fujikyu.co.jp/bus/highway/fuji5/time/d-time7-10.html

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