ユーミンが荒井由美だった頃、「晩夏─ひとりの季節」という曲を出し、衝撃を受けた。その中に、「秋風の、心細さはコスモス」という一節がある。コスモスは、一、二本でも群生していても、風に揺れている花だ。風が通り抜けやすいように葉も細い。茎も細くて折れやすいので、花瓶に活ける時は単独で、咲き乱れるまま放り込んでおく。
コスモスを描いたことがあるが、意外に難しかった。しっかりと描くと「心細さ」は出ない。4H〜8Hの薄い鉛筆で「軽く軽く」と心掛ける。外側にある八枚の花びらのようなものは「舌状花」で、一辺がギザギザの長方形だ。中心にあるボンボン状のものは「筒状花」の集団で、これを見ると確かにキク科だ。そして半ば開いたコスモスを横から見ると三角形に見えるから、コスモスは、円や長方形、三角形が隠れた、不思議な「宇宙」ということになる。
我が家では娘が十月生まれで、毎年、誕生日に送っているうちに、コスモスは娘の花になった。幼女から少女へ、中高生から学生へと娘が成長する間、コスモスは秋の誕生日を華やかにしてくれた。娘は長く留学していたので、その間、花を送ることは出来なかった。別のものを送ると、外国から礼状が届き、「友人がコスモスの花束をかかえてきてくれました。」「友人とコスモス畑へ行った時の写真です。」と、コスモスを介しての繋がりが続いているようだった。母国を離れ、辛いこともあっただろうが、コスモスのおかげか、娘は乗り切った。
私はコスモスを見る度に、遠くに居る娘のことを想う。
かなたにあって、私によく似た、もう一つの「宇宙」のことを─
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