「巣箱」

連休の間に息子が来て、庭の招霊(おがたま)の木にかけてある、古い巣箱を修理してくれた。この春ウグイスやシジュウカラのつがいが何度も訪れ、何事か相談するように鳴き交わしていたのに、結局は飛び去ってしまった。前の家ではスズメが一度雛を孵し、こちらもとても幸せな一週間を過ごしたのに、今度はどういうわけだろう。「家賃0、敷金、礼金0なのにねえ、、、」と私がこぼすと、息子は巣箱についてインターネットで調べてくれて、入口が問題だと発見し、少し小さくしてくれたのだ。
鳥の巣穴の入口は、どうやら種類別に決まっているらしく、シジュウカラ28mm〜30mm、スズメ30mm〜40mmと厳密らしい。大きな鳥が入ってこられたら卵が危ない、と言われてみれば納得する。
最近は、年に数回しか会わなくなった息子のやさしさがうれしくて、連休の後、何とか鳥を呼び寄せようと、私は、水浴び場を作り、餌台を作って、「風呂付き、隣はスーパーだよ、、、」と、どこか遊び気分だった。
招霊の木に白い花が咲いた朝、チュチュチュチュ、、、という高い声がして、小さなメジロの雛が二羽やってきた。スズメも二羽集まって、にぎやかな合唱だ。お米があるよ、、、と言っているのか、と、微笑ましく見ていた。
その時だ。突然、大きなカラスがバッと雛の一羽をくわえて、目の前の電線へ。あっ—と見ている間に、羽を毟り、胸を啄み、頭も足も皆、食べてしまった。驚くのは、首がだらんとなってしまった雛を押さえつけているカラスに、もう片方の雛がチョン、チョンと近づいていくのだ。仲間が犠牲になっている間は安全だと知っているのか、それとも未経験で、ただ分からないのか、、、とにかく私が置いたお米に誘われてきたメジロの雛の存在が、わずか2〜3分の間に、跡形もなく消えた。
そして、とてつもなく明るい午後がきた。

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