「個展のお知らせ」

井上 直 展
12月6日(月)〜18日(土)11:30〜19:00


「谷戸の蛍A」2020~2021 1620×1940

art space kimura ASK?

〒104-0031 東京都中央区京橋3-6-5 木邑ビル2F (東京メトロ銀座線「京橋駅」2番出口より徒歩1分。都営浅草線「宝町駅」4番出口より徒歩1分。)

TEL.03-5524-0771
E-mail: asku@oak.ocn.ne.jp
ASK? ホームページ http://asku.sakura.ne.jp/ask

4年ぶりに個展をさせていただきます。この4年間、特に後半は世界中がコロナウィルスに翻弄された2年間でした。450万人以上の方が感染症で亡くなり、それは今も続いています。
「わたしは知っている。なぜ人びとが死者を土に埋め、そのうえに考えうるかぎりいちばん重く永続的なものである石をのせるのかを。そうしないと大気のなかに死者がみちあふれてしまうからだ。」(「儚い光」黒原敏行訳・早川書房)とアン・マイクルズは言いました。数千年前のギリシャの遺跡は、そこに確かに存在した人々の痕跡を伝えてくれますが、死者の時間と現在の私たちの時間が交錯する風景があるのかもしれない、と思いました。そして「時間的継起を風景へと展開することで、それだけよりよく、時間を見ることが、経験することが、把握することが、それに働きかけることができる。」(「晩年のスタイル」大橋洋一訳・岩波書店)とエドワード・サイードは述べています。
ご覧になっていただければ幸いです。    井上 直    
なお以下をクリックすると 個展のパンフレットがご覧いただけます。
個展紹介パンフレット

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「個展のこと」

昨年12月の個展がこの6月に延期されていましたが、それも緊急事態宣言下になってしまいました。一応企画展なので画廊ASK とも相談しました結果、今年12月6日(月)〜18日(土)に決まりました。画廊のある京橋の通りも、美々卯が撤退し寂しくなったそうですが、年末には少し賑わいを取り戻しているのではないだろうか、という判断です。
コロナの状況下、皆さまはどのようにお過ごしでしょうか。 私は、川崎市、町田市、横浜市、と三つがぶつかる場所、つまりどの市の中心からも遠い辺鄙な場所で、静かにコンスタントに描いています。若い頃、大江健三郎氏の小説に多大な影響を受けながらも、彼の書くものによく出てきた「習慣」という言葉に軽い反発を感じていました。「惰性」に陥るまいと思っていたんだろうと思います。今、年老いて体力が落ちてくると、まさにその「習慣」をよすがに暮らしていると思います。以前と同じようにはできない。あれをしながら、これもする体力はない。他のことは出来なくても1日にこれだけの時間だけはアトリエに入る、それだけで必死です。
それでもこの時期、美容柳や紫陽花が華やかに咲き、一人ぼっちの生活を励ましてくれます。ヤモリの子供たちがもつれ合って日光浴をして気持ちよさそうです。オオルリが美声を響かせ長く長く鳴いて、そんなにアピールしたいの?恋をしたんだね、と微笑ましい限りです。
刻々と近づいてくる私の終わり、その予感を感じつつ、それを画面に定着できるか、できないか、私の絵の価値はそれで決まるだろうと自覚しています。12月近くになったらご案内差し上げます。どうぞお元気で。
                                井上 直

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「ヒポカンパス詩画展」の動画

Happy Blog 大杉利治さんのおかげで、2006年の「ヒポカンパス詩画展」の動画が再び見れるようになりました。初めての方も、久しぶりにご覧になる方も、共に楽しんでいただければ幸いです。
日本で初めての長編同人誌「ヒポカンパス」が出版されたのは、もう15年も前になります。その表紙を担当させていただいたおかげで、3人の素晴らしい詩人の方々とのコラボレーションが実現しました。コロナの時代の今、その幸せを改めて感じています。
http://www.shimirin.net/~nao/doujin.html

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「『V字鉄塔のある惑星A』を歩いて」

詩人の岡島弘子さんが詩誌「つむぐ」に「『V字鉄塔のある惑星A』を歩いて」と題するエッセイを書いて下さいました。ご紹介させていただきます。
「V字鉄塔のある惑星A」を歩いて
                            岡島弘子
 その日は快晴だった。北風が強く吹いて私の縮れ毛は迷路のようにもつれた。そう、方向音痴の私にとって岡本太郎美術館への道は迷路だった。私バスの終点で降りて、まず方向を決めることにする。地図を見ると生田緑地の中だ。通りがかった人に道を尋ね、曲がりくねった道をひたすら下りる。目立った道標がないので、再度家族連れに尋ねる。みな親切に教えてくれる。若いカップルが多いのは新興住宅地のせいなのだ、と思う。この地で新生活を始めたばかりなのだろう。希望にあふれた笑顔がすがすがしい。「閉まっているかもしれませんよ」と声をかけてくれる人も。そう、今日はコロナウイルス感染防止のための緊急事態宣言が発令されて二日目、4月10日なのだ。今日まで、ということなのであわててやってきたのだった。三つ目の坂を下りたところで木立の間に巨大なモニュメントを発見。なるほど。道標がなくとも、一目瞭然、とばかり立派な玄関に突進すると、そこは喫茶店だった。地味なトンネルのような入口をようやく見つける。常設展岡本太郎「聖家族」のまろやかな作品群の中を突っ切るとその奥に、ひときわ明るいスペースが。岡本太郎現代芸術賞展。その空間のほぼ中央に「V字塔のある惑星A」があった。井上直さんの、2006年の作品だ。壁の一面を全部使っての大作。荒涼とした画面には緑が欠片もない。白と灰色、そして黒と青。寒色系で占められている。鉄柵とV字塔と電線だけが地平線の奥まで連なっている。空も不気味な雲で覆われていて、カラスが二羽飛んでいる。そこでひときわ目を引くのが白衣。そうあの透明人間のような白衣だけが黒いボートに乗っている。ボートは三隻ほど。手前と中程と、そして奥。そのほかの白衣は、地面に横たわり、あるいはちぎれて電線に引っかかっている。裂け、横たわる白衣は残雪のようだ。V字塔はこの画面の中で、ひときわ不安定だ。そして気になるのが画面右奥の灰色の建物と丸みをおびた、ふたつの塔のようなもの。じっと眺めていると不安と危機感とに襲われる。これは、雷雲に覆われた荒野ではないか。今にも雷鳴がとどろき、稲光して驟雨に閉ざされる。その直前の原野。
この絵に初めて会ったのは2006年の井上直さん、の個展で、であった。その時ご主人は雷の研究をしている、と聞かされた。
2020年の今、こうしてふたたびこの絵に向き合うと、次々と、この絵の言葉が聞こえてくる。そう、謎の白衣。あれは研究者であるご主人だったのだ。そして荒野はご主人の心に広がる研究現場だった。右奥の建物。あれは原発。2011年の東日本大震災の原発事故を予知しての危機感だった。そして2020年の新型コロナウイルスの恐怖。千切れたり横たわったり、そして電線や鉄柵に引っかかっている白衣は医療従事者であり感染した犠牲者なのだ。そして、もうひとつ大切な声が聞こえてくる。白衣。それは井上さんの愛とかなしみ。それに他ならない。井上さんのご主人は亡くなられた、と聞いている。寒色系だけの画面の中、白衣だけがふくらみをおび柔らかい。愛とエロスだ。亡くなったご主人を絵の中に描くことによって、いつまでもいっしょに生きていくことを可能にしたのだ。そしてかなしみ。私も故あって、一人暮らしの達人となった今、そのことがひしひしと伝わってくる。   
2006年に描かれた絵に今やっと時代が追いついた、と言うべきか。放射能汚染。コロナ禍の危機と恐怖。そして死。それらを「V字塔のある惑星A」は先取りしていたのだ。
生田緑地を彷徨ってやっとここまでやって来た。これは私自身の心の中の旅でもあった。
●おかじまひろこ
1943年東京生まれ。詩集『つゆ玉になる前のことについて』で地球賞受賞。詩集『野川』で小野十三郎賞特別奨励賞受賞。「ひょうたん」、「歴程」同人。最新詩集『洋裁師の恋』。山梨日日新聞月間詩壇の選者。2020年12月に「世田谷歌の広場」で私の詩が演奏される。

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「個展延期のお知らせ」

2月半ばに「岡本太郎現代芸術賞展」と「損保ジャパン日本興亜美術賞展(Face2020)」のオープニングがあった時は、コロナウィルスのことは話題にも上っていませんでした。それからあっという間に世界中に拡がり、3月にはイベントも展覧会も中止になって、4月には緊急事態宣言が出ました。後になって2020年のことを思い出すとしたら、と考えざるを得ません。それは美術の世界にどのような影響を与えるのでしょうか。美術自体の内容にも、アーティストの生活にも、、
創作活動をしていらっしゃる方は、当然ながら「創作」がメインですから、生活に必要なお金は
バイトをしたりパートをしたりして何とかしていらっしゃる方も多く、その方達の生活基盤が揺らぐ事態になっているのです。私は高齢者で、持病もあり、重症化するリスクが高いと、お医者様に警告されているわけですが、年金を貰っており、細々とやりくりすれば何とか描いていける、そのことが何だか申し訳ないような気持ちで、ブログ更新も躊躇していました。
今年の暮れは3年ぶりに個展を予定しておりましたが、7月後半になっても感染の拡大が止まらず、画廊とも相談して12月の個展を延期することにしました。一応、半年後という予定ですが、
この先どんな状況になるのか、誰も分かりません。
誰にも会わなくなったし、どこへも行けなくなった訳ですが、描くだけの私の暮らし、そのものはあまり変わっていません。昨年の10月、画集発刊の2ヶ月後、せっかくお手紙を下さった方にお返事も差し上げないまま、とにかく当時降りてきていたイメージを画面に定着させなければ、、、と描き始めた絵が、AとB 2点、ようやく10ヶ月ぶりに完成しました。私は呼吸器も弱く、煙草は吸いませんが、一服点けたい気分です。
いつかコロナのこと等気にせずに作品を見ていただける日が来て欲しいです。

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「2019年の終わりに」

2019年も残すところ半月になりました。今年は8月に発刊された画集が沢山の方の手に渡り、三十数年に亘る作品をじっくりとご覧頂けましたことが、まず有り難いことでした。そしてその後、頂きました様々な感想は、ご本人の許可をとってブログでご紹介したいほどだと思ったこともありましたし、少なくともお返事を差し上げたいとも思いました。しかし全て断念しました。この場を借りて御礼とお詫びを申し上げます。
発刊の後私がやるべきことは、褒めていただいた過去の作品のことを色々考えることではなくて、新作に真摯に立ち向かうことと思い定めまして、新しいキャンバスにGesso(下地)を塗り始めました。それから3ヶ月半、まだ苦しい段階です。「繰り返さない。」を信条としているので、完成までを10段階とすると1〜3はいつも苦しみます。反対に8〜10になると、もう突っ走るだけ。その勢いを求めるから繰り返さないんだと思います。文章の連なりが時に「文体」になるように、いつもの自分を越える一瞬が来ることを経験で知っているからです。
来年は久しぶりに公募展に参加します。ご覧になっていただけると嬉しいです。
1. 第23回 岡本太郎現代芸術賞展  
  2020年2/14(土)〜4/12(日)
  9:30〜17:00 (入館は16:30まで) 月曜休館(祝日を除く)、祝の翌日
  岡本太郎美術館
  〒214-0032 川崎市多摩区枡形7-1-5 TEL.044-900-9898
2. Face 2020 (損保ジャパン日本興亜美術賞)
  2020年2/15(土)〜3/15(日)
  10:00〜18:00 (入館は17:30まで) 月曜日休館(祝休日除く)
  東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
  〒160-8338 新宿区西新宿1-26-1 TEL.03-5777-8600

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最後まで残った絵

画集の発刊が遅れ、予約して下さった方をはじめ、あちこちにご迷惑をかけております。
色校正で最後まで残った絵は次の2点でした。
処理工場の夕暮れA
http://naoinoue628.webcrow.jp/j_sfile/wplant.html
処理工場の夕暮れB
http://naoinoue628.webcrow.jp/j_sfile/wplantB.html
この絵について過去にブログを書きました。
「鳥、鳥たち」
https://www.a-happy.jp/blog/nao/2012/04/
「美しさ」と「辛さ」が同居している状態を表現したいと思っていました。
まだ福島の事故は起きていない頃の絵でした。
実際に色校正をすると「暗さ」と「明るさ」の割合がとても微妙で、
ちょっとズレても成立しなくなります。 校了したいと思う気持は
私が一番強いはずですが、妥協するわけにはいきません。
校了した後、手作業の「フェデックス綴じ」ですから、出版は8月上旬に
なりそうです。 5月20日出版の予定だったので、本当に申し訳ない。
納得のいくかたちでお届けしたいと思っており、そのために制作チーム、皆で努力しておりますので、もうしばらくのご猶予を。

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画集の概要

画集の概要が決まりました。出版は7月中旬の予定で、順次予約を受付けます。色んな場所で
販売させていただきますので、よかったら、その場でお求め下さい。送料がかかりません。
井上 直 画集
 
 B4版 横広コデックス綴じ 72頁
 限定1000部
 テキスト  大谷省吾
 翻訳    南平妙子
 写真    フォトセンター・ヴィレッジ、タジマ・スタジオ、エス・アンド・ティフォト
 制作    印象社
 印刷    光村印刷
 発行    art space kimura ASK?
 価格 1冊:税抜き ¥7200 (税込み 8% ¥7776 10% ¥7920)
 送料:¥600~ 册数、距離によって変わります。
詩集に比べると高いですが、色校正も4回以上やっていますし、「コデックス綴じ」というのは頁をまたがって印刷できる綴じ方で、今では職人さんも少なく、手作業の仕事です。テキストは全て英訳してありますので、外国へのお土産にいかがでしょうか。台所の食卓で「玉じゃくし」のデッサンから始め、しだいに世界を広げてきた、私の36年間の集大成です。どうぞよろしくお願い申し上げます。 
現代日本美術展に出した「最後の朝」を東京国立近代美術館賞に選んで下さった本江邦夫氏が、つい先日亡くなりました。「あの後、このように生きて描いてきました。」との報告も兼ねて、一冊お送りするつもりが無理になりました。美術界では雲の上に居るような方で、私のような者が何故?と自分でも不思議なのですが、同い年のせいでしょうか、深い虚無感にとらわれています。
                         井上 直

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画集出版、遅れます。

各作品の色校正をやっていますが、出版が少し遅れて6月末から7月初めになりそうです。待っていて下さる方がいらしたらすみません。1992年以降「白衣」に入ってからは資料もあり、何とかなるのですが、鉛筆の頃が問題です。当時はポジとネガ両方のフィルムを残す方がいい、と言われておりましたが、いつの間にかデジタルの時代になりました。フィルムのよさもあるので、両方の兼ね合いを考えながらやっています。それも何とか納得できるところまでやるだけですから、あと少しです。
画集を作る、ということはこれまでの自分に順番に出会っていく作業で、そのどの自分も必死だったなぁ、、と思います。美術大学も出ないで、自分の持っているものだけでやろうとしていた。その私にいつも力を与えてくれたのは詩人たちでした。彼らは「詩人大学」を出ていなかった。その感性と言葉の力、背景となる思想を持って言葉を紡いでいたのです。詩を書くように絵を描いていこう、それが私の出発点だったことを今回の画集制作は思い出させてくれました。

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「画集発刊のお知らせ」

2017年の個展以来のブログ更新です。「平成」が「令和」に変わるこの春、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。長期間お休みしてしまいました。
2018年1月に画廊との間で画集出版の話が起きました。初個展から36年になりますので、いつか画集を作ってみたいと思っていましたが、それが実現するかもしれないというのは、私にとって一つの事件でした。本がなかなか売れないと言われる時代に、画集はどんな意味を持つのだろう、と自問しながら、作品を選び、頁ごとのレイアウトや全体の構成を考える1年2ヶ月でした。私は大作を中心に制作を続けてきた作家なので、そのスケールをどうやって伝えるか、も課題でした。
今、文字やレイアウトの校正がほぼ終わり、各作品の色校正に入るところです。出版は5月20日前後になりますので、ご購入いただける方は、その頃 art space kimura ASK? または私のアドレスまでご連絡下さい。2020年暮れの個展会場でも入手できます。具体的な価格につきましては画廊に任せてありますので、決まり次第、アップロードさせていただきます。
絵を見た人々の中に眠っている「私と似た感覚」を呼び覚まし、それぞれの人がご自分の生きてきた時間や、忘れ難い瞬間に思いを馳せる—そのきっかけになるような画集であれば嬉しいです。

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