パチンコ屋の換金所の前で、もう何時間も一人遊びをしている子供がいた。
台車にぶら下がったり、独り言を喋ったり・・・。
 どうやらこの子の両親は、パチンコに夢中になっているらしい。
「おばちゃん、コレ開けて。」
 ガチャガチャの機械から取り出したプラスチックの丸いボールの蓋を開けてと言う。
「ありがとう。」
 女の子は無邪気な笑顔で、再び換金所の前に座る。
 夕陽は傾きかけていた。
‘‘この子の親はどうしているのだろう・・・。‘‘
そう考えていた時、それを見ていた私の母が、ふと
「あの子は強い子になるだろう・・・。孤独ということからは強い子になる。」
と、呟いた。
 その時、女の子の母親らしき人が
「もう、中で遊びなさいって言ったじゃない!!」
と、女の子の手を引っ張った。
 その子は母親の大きなお腹をさすっては
「赤ちゃん、赤ちゃん。」
と、はしゃいだ。
 どうやら母親は妊婦らしい。
そして換金所で働く母の話では、毎月二回、土曜日曜は、女の子は換金所の前で遊ぶ。
「孤独に強い子になる」
 私の母の一言が、頭の中でリフレインする。
 果たしてそうだろうか?
今度は赤ちゃんが産まれるというのに。
赤ちゃんが産まれたら、母親は姉になるその子の面倒まで見れるだろうか。
幼い頃の愛情不足が、大きくなって暴走しなければいいのだけれど。
 その子も淋しい。
 私も何だかやるせない。
 また、パチンコでしか満たされないその子の親すらも・・・。
 いつからこの国は、こんな孤独な社会になったのだろう。
夕陽はもう、すでに沈んでしまったというのに。
 それでも少女は、自分にしかわからない唄を歌っている。
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散文(批評随筆小説等) 唄 Copyright 為平 澪 2009-07-25 05:28:53縦
 

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