おとぎ話

おとぎ話
僕は君を失ったらきっと狂うよ
オフィーリアの意識が浸透してくるベッドの中で
僕は夢見心地で君にささやく
「狂ってから、死のうか」
貴女のいない世界に一人
生きる強さが僕にはない
それではあなたを食べてあげましょう
彼女は言う
一生懸命一片の肉片も残さず
食べてあげるわ
「女郎蜘蛛」だね
あなたが言ったのよ
私のことを「けなげな女郎蜘蛛」だって
じゃあ、僕は食べられちゃうんだね
そうよ、あなたは誰からも好かれるから
誰にも渡さないの
重いな・・・君の愛は・・・
でもそれくらいの重い枷が
僕には丁度いい
でも食べたその後は?
そうね
あなたを身籠るわ
他の誰のところにも転生できないように
そして身籠ったその後は?
あなたを産むわ
そしてあなたは私に恋して
激情の果てに壊れればいい
壊れて死んだその後は?
また食べるのよ
素敵だね
素敵でしょ
そう笑い合いながら
僕は再び彼女の体に滑り込む
彼女は幽妙な海底
現世(うつしよ)から色情の恋獄に僕を繋ぎ止め
味わいながら巧みに踊る
もう僕は戻れないほど溺れきっているのに
彼女のおとぎ話は終わらない

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