病院

病院
病院
できるだけ
楽な世界に 逃げ込んだつもりが
ヤマイの重さと
夜勤の辛さに追われた
愛の飢餓者と
背徳者の女の群れ
きれいな白い箱の中
開いて見ろよ
輸入品の輸血が溢れて
こびりついてどす黒く心を染め上げる
糞尿の臭いと共に食事しながら
今は亡き母を求める
生き延びる事を余儀なくされた
老人のひ弱な叫び
人権という言葉に
哲学すれば
暇人の賜物と忙者が
高笑い
チンケな小娘の戯れ言は
帰る道さえ喪失させる
手のひらいっぱいの忘却の薬
眠れ!
眠れ!
言い聞かせなければ
いけなかったのは
暗闇の合間を縫って
響くナースステーションでの嘲笑い
「朝まで死んだふりをしなければ!」
だから
美しいものを
描きたい
昨晩の課長ナースが 放った
人権侵害の言葉を
忘れるためにも
自分の心にも世界にも美しい花を咲かせるためにも
上出来とは
決して言えないが
今は
これが精一杯
夢想する乙女よ
お前の閉じた瞳の奥が
美しいことに
想いを馳せていたら
私は 満足だ

tukiyomi について

著作権は為平澪に帰属しています。 無断転写等、お断ります。
カテゴリー: 04_携帯写真+詩 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です