心象風景/欠けた器

心象風景/欠けた器
みんながみんな口を揃えて
いうのです
「死ねよ」
と。
母親は哭きながら
お前は私の背負う十字架だといい
父親は金をくすねて出ていきます
弟は無関心なまま明日の仕事の見積書と新妻の機嫌とりに夢中で
私のアイデンティティーは
錆びれた空の彼方の人から
無に還れと欠けた器を
投げつけてきました
ひび割れたお椀の中から
私の薄っぺらなイデオロギーが滴り落ちて
砂塵に回帰せよと
形あるものたちが叫びながら笑っています
お椀の中から立ち上る悪臭は私の精神で
夢の島にたどり着くまでに
一目
自分の顔を
薄汚れたお椀にに盛り付ければ
あとは要済みです
あなた方の信仰する神は
沙羅双樹の枝で編み上げた中に
慈愛を注ぎ込み高みへ導くでしょうが
スクラップになる私の赤茶けた役立たずの欠けた偏屈さには
ゴミ処理場が
私の極楽浄土だと指し示し
くすんだ空の海原を映した
器が 私の内でも
空の彼方の人と同じ声で
繰り返し 繰り返し  
波紋を投げかけます
「死ねよ」
と。

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