傷口から媚薬

傷口から媚薬
躊躇い傷 隠していた
汚れた包帯をひんむいて
いっそうのこと
傷口に煙草の火を
押し付けて
本当の哀しみの痛さと
熱を教えて欲しい
今夜のバーの
サックスの音色は
胸に滲むから
煙を吹き掛けて
曇らせた
バーテンダーは機械仕掛けの昔のあなた
タイムスリップして
ストリップした私の胸元に
テキーラを流し込んで
これが今夜の代金引換だよと
にやつきながら
一緒に踊って欲しい
あなたのリズムで
私は踊る
くねる
歪み喘ぐ
喪失する楽園から
覚醒した朝
腕枕の固さの代賞に
ひとこと
「女」
と呼んで欲しい
私は、あなたのの鋭い声と
目線が好きで
あなたの胸に口紅で
赤い蝶を描く
汚したシーツ
泳ぎ着かれて果てた
野良犬たち
叱るように愛して
石榴を割って
突き上げて
傷口から始まるロマンス
約束の海
潮の薫りが満ちる部屋

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