晩夏を逝く

晩夏を逝く
名も知らぬ街の
商店街の小料理屋の階段に
仰向けの飛べない蝉 一匹
頼る身ないらしく
もがく足に
人差し指を絡ませたのは
多分
私の気紛れ
お節介と寂しさの狭間
蝉は指に絡み付き
強く指を刺して
みつからな蜜のかわりに
強く強く指を噛む
路地裏に樹はない
ましてお前
最期の力強さ
人間に反旗を翻す
もう啼けないお前を
コンクリートの
樹にみまごう黒塗りの
看板に見捨てた私を
その玉虫色の瞳が閉じるまで
恨んで私の逝く人生に
来年
偽物の森で会おう
できれば
命がけの恋の仕方など
教えてくれれば
私は
人差し指分
救われるだろう
なぁ、お前
蝉時雨の啼く森で
一緒に泣こうか
叫ぼうか

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