桔梗

桔梗
廃屋に
今年も 紫の桔梗が
二輪咲く
植えた女主人は
介護疲れで井戸の中
花弁の輪郭に
思い出をなぞると
過去の笑顔に
辿り着く
砂の城に住んでいた
光の中の男と女
夢のような時間
咲き乱れた想い
疲れはてた花は
色褪せた水中花
まだ 息をしている
植物のような貴方を残して
殺害するより
自殺した
女主人の寂れた王国に
今年も二輪の
桔梗が寄り添う
指で押すと
パチンと蕾は泣いた
叫んだように
裂けて
壊れた

tukiyomi について

著作権は為平澪に帰属しています。 無断転写等、お断ります。
カテゴリー: 02_詩 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です