姫君

姫君
かの姫君は
ネットと本があれば
生きてゆけるのです
他には何も知りたくない
幽閉王女は
ネットと本に
知識が瓶詰め
かの姫君は
幻想世界の住人です
膝を抱えて眠る
三角錐の中の少女
妄想でできた
伸び続ける白い白い象牙の塔
知識は一級品の物語
石灰石のバリケードで
身を守る
本棚の配列は彼女の遺伝子
象牙の塔は白い沈黙
姫君が
誠に恋を知ったなら
それは姫ではありません
城を抜け出したなら
それはきっと
美しいだけの愚かな女
けれどあなたは姫君です
ハイネの詩に恋をした
文字配列のレールの上を
歩み続ける
法則的な文学少女
姫君よ
早くお帰りなさい
あなたを抱くその腕は
地上にはない理想郷
あなたの愛する
教科書と
白い巨塔が
恋のまほろば
疑似恋愛が
いつかの墓標
ですから
探さないでやってください
今頃あなたの王子様
異国の船に乗せられて
廃盤の
古書になって
埋もれたまま
電波も届かない声
ちぎれた恋文
白紙の散乱
過去の人

tukiyomi について

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