私の指紋

私の指紋
鳴門の渦潮よりも
精密に深く渦を巻き
赤い血潮に指先は灼かれている
それは不解明の暗号の記録
誰かが緻密な大河のくねりを
第一関節に残していった
足に張り付いた
メイプルの葉脈でさえ
個性の背筋を伸ばしては
掴み損ねた太陽に灼かれて
色鮮やかに染まり
温かさだけくるみこんで
去りゆく晩秋に手を振る
ひとひらの雪でさえ
違えた結晶を分け与えられ
手のひらの温度差に気を失って
微睡みの涙を浮かべる
私の指紋
神世の時代から
とうとうと湧き出る霊(ち)の潮(うしお)
西国浄土から授けられた那由多の葉脈
業の流転の刻まれた結晶が指先に
今世の運命ごと譲られた命の脈流
乾杯
奇跡の軌道の模様の親指
青空に立てて私の拇印
空は私の所有物になり
私は毎日違う夕日を朱印で飾る
命の営みに産声を聞いた日から
筋違いのシナリオを
私は包括し
己の渦を
渡る

tukiyomi について

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