紅い紐

紅い紐

「お前が必要なんだ。」
「でも、俺は妻を愛しているし、故郷を離れたくはない。」
「会社に縛られて、シャツがシワシワになって、
 ネクタイが曲がってても、笑って営業に…」
そこまで言って彼は急に
携帯の声を押し殺した
一人寝の女の部屋で
夜が震えた
私は彼を縛る総てのものから
解放して
色を着けてあげたかった
 (お前が必要なんだ)
守れない告白
色褪せないうちに
私は薬指に
ガーネットの指輪をつけて
空中で手首を
ひらり ひらり
と揺らす
まるで心中する事を
手招きするように

tukiyomi について

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