旅人

旅人
夕暮れ時を切り取った
一枚の写真から
行き交う人々の群れ
一日の終焉の延長先で
約束された夜が
静かに窓辺へ降りてくる
コンクリートに入った
マッチ箱の灯火を
こすっては 灯し
こすっては 灯し
箱の中から一本ずつの人々が
平等に差し出された腕(かいな)に抱かれ
ゆりかごの中で旅をする
ゆれる眠りの森の奥で
その腕の柔らかい導きに
今日の疑問符を投げかけながら
空白のノートに落書きをする
明日までの冒険
おやすみなさい
空の巨人
灯火が静かにひとつづつ消えてゆく
まるでそれが
当たり前の儀式であるかのように

tukiyomi について

著作権は為平澪に帰属しています。 無断転写等、お断ります。
カテゴリー: 02_詩 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です