拝啓    幸せに遠い二人へ

拝啓  幸せに遠い二人へ
私たちは互いが憎み合い、恨み合い、奪い合い、言葉を失って、
初めてコトバを発することが出来る、ピリオドとピリオドです。
しあわせ、が遠ざかれば遠ざかる程、雄弁になれるのは
ふこう、の執念が、為せる業でありましょう。
かなしみ、こそが、最大の武器である貴方の哀は深く幼く、
激しい憤りとなって、私を抱き寄せようとする。
私は泣いてる赤子に、いつも疑問符を投げかける真似をして、
貴方を困らせます。
  (嫉妬はいつも、私たちを尖らせて、新生させる )
やさしさ、を眠らせたままで、裸で歩く貴方の手を、そっと、
握ってあげたならば、貴方が死んでしまうことを、知っています。
愛の淵は、二人の時間を止めることが可能なまでに残忍なことを、
私たちは、踝まで浸かったときに、知りすぎて、泣きましたね。
形あるモノばかりを掴んで、その温度を信じられないくせに、
私たちは、あいしてる、を繰り返すのです。
  (つなぎとめられない接続詞の空間で、
           
           辛うじて、息をする二人 )
憎しみや喪失が、愛や希望で、あったためしがないと体に刻みながらも、
それらが、どこかに埋まっていると、言い続けなければ、
生きてはいけないのです。
剥き出しの怒りのうしろで、泣いている貴方の瞳には、海が、 映っています。
貴方が私を見つめるとき、青すぎるのは、そのためでしょう。
海に還りたいと願う貴方に、私は空のことばかりを話すから、
貴方はいつも、とおい、と泣くのです。
  (あぁ、できるなら、できるなら、
         空が海に沈めばいいのに・・・)
そんなことばかりを考えて、私は今夜の「夜」という文字が、
消せないままでいます。
朝になったら、私は貴方の私でないように、貴方も私の貴方ではない。
それは、ふたりして、誓った約束でしたね。
私たちは、冬の雨に打たれながら、泣き顔を悟られないように、
いつまでも、はしらなければならないのです。
   
 祈りを捨てて
    
   幸せとは逆方向に  
      
     お互い背を向けたまま  は し る 。
 追記  ふたりの間に「いたみ」という名の
             
         
           こどもが、やどりました・・・。

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