誕生

誕生
波の狭間を 純粋とあそぶ
十五夜の夢を視ていたアコヤ貝が
口から小さな あぶくを吐く
淡い痛みから 海底に
仄かな焔が ともる
母音のつづきの淵より
真珠がこぼした つぶやきが
空へとのぼり
みえない星が
独り、
王者の号令を轟かせ
一日だけの 軌道を渡る
星を見上げていたアコヤ貝は
真珠色の焔を見送ると
しずかに 沈んで逝く
音は波に消されて逝く
記憶は 海にのまれて逝く
そして
ひと、は
みな
貝であった
過去に 泣く

tukiyomi について

著作権は為平澪に帰属しています。 無断転写等、お断ります。
カテゴリー: 02_詩 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です