ハサミを入れる

ハサミを入れる
今日ハサミを入れた
伸びすぎた髪に
何日も 何年も 体の一部だったものが
バサバサの過去を切り落として
後ろ髪の未練を捨てて
鏡に写る新たな自分の顔に
志しが反射する
ハサミを入れる
昔 私を帝王切開した母はハサミのようなもので
裂かれる痛みと共に
私を産んだ
自分の体にハサミを入れて
一生傷を作った子を
母は愛した
温かい言葉はあまり聞かなかったけど
彼女と私をつなぐ臍の緒は
桐の箱に入れられて彼女の胎教を聴きながら
眠るもう一人の私
今日
自分の髪にハサミを入れる
築き上げたものを捨てるように
新しい愛を誰かに差し出すように
女の命を切り落とす
ハサミを入れる
それは
母が愛する者を産むために
悲鳴をあげて 傷ついた証
私にも
母と同じ血が流れているのか
唇を噛み締めて
血の覚悟をした
私が写る

tukiyomi について

著作権は為平澪に帰属しています。 無断転写等、お断ります。
カテゴリー: 02_詩 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です