供物

供物
私たちはお互いに捧げものにする「生け贄」について
話し合ってました
私が家に上がった百足を殺していた頃
あなたは勉強の邪魔になった金蛇を
殺していました
私が「百足は炎のような黒さだった。」というと
あなたは「金蛇は雲のような、白い腹をみせた。」
という
私が、「それが憎くて怖かった。」というと
あなたは、「怖くて、淋しかった。」という
私は「とても、痛かった!」というと
あなたは、「とても、悲しかった!」という
その痛みと悲しみを 私たちは 違う文字にして
両親のお仏壇に 飾って手を合わす
お父さん、お母さん、
これが私たちが 初めて殺めた生き物です
あなた方に 奉納します
お父さんが 怖いです
お母さんが 憎いです
お父さんとお母さんに殺された 私たちの
生物を捧げます
この歪な文字は はなむけ の、花
私たちの手は血まみれです
真っ赤な二本の蝋燭が めらめらと燃え上がり
汚れて黒ずんで 腐り堕ちて 青ざめながら
溶けて逝きます
お父さん、お母さん、赦してください
私たちは こんなふうにしか 生きられません
やがて 私たちの肉体も甘い透明な不浄の水となり
その蜜に群がる無数の黒い
ハイエナのような蟻たちによって
笑われながら 解体され 
あなた方の所へ 運ばれてゆくことでしょう
その時は
お父さん、お母さん、一緒になりながら
私たちを 食べてください
 ・・・お前たちの一生も、所詮、
       虫螻みたいだったねと・・・
あぁ、
カラカラとした笑い声が 
カラダから響いてきます
私たちが捧げたものは 全部昔から 
奪われていたモノたちばかりでした
 
 父に・・
   そして、母に・・・

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