せんせい。

せんせい。
せんせい。
みんなが違うことばかり言うのです。
私の国は、日本だといい、
私の国は、大和朝廷だったといい、
私の国は、経済大国だったといいます。
社会の先生に聞いたら
それらは全て正解だったといい、
倫理の先生に聞いたら
それらは全て間違いだというのです。
そして
生活指導の先生は
オーストラリアの首都は
シドニーだといっていましたが、
国語の先生は
キャンベラだ、と
こっそり 教えてくれました。
それらを
家庭科の先生に言うと、
【時々、名誉や富が変わったり
   加わったりすると スパイスされた
              品名になる。】
という料理のレシピを私にくださいました。
せんせい。
私の一番大好きなせんせい。
あなたは理科室で、それらのコトバが
私の耳にこれ以上、入ってこないように
私の両耳たぶにピアスホールの穴を
バキンと開けて、こういいましたよね。
 【この痛みだけを信じなさい。
   この耳たぶから流れる、赤い温みを信じなさい。
     冬に耳が疼く度に、それらの間違いを、
       記憶から消しなさい。】 と。
                      
せんせい。
また、あの理科室で痛みをください。
私をピアッサーで刺したときのように
もう一度痛みで、答えをください。
あなたに応える私になるために、
もっと、強く、酷く、貫いてください。
そして、また、あの、真っ赤な部屋で、
教え込んでください。
 【君が産まれた国は、
   アルコールの炎と消毒液の似合う、
     この理科室だけだ】 と。

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