我慢できなくなった空から
ゆらゆら ゆらゆら 焔(ほむら)が見えます
お父さんは
「良い子にしていなさい。」 と
布団をかぶせたまま 出て行きました
こんな嵐の前日は 必ず空に
ニタリと嗤う 月が見えます
私 シンクロして 私を探す
輪郭をなくして出て行く 私
為すがままに ゆらゆらと 立ち上がり
ほろほろと 見えない月に 喚ばれていました
白いノートから 我慢できなくなった文字
くっきり 浮かべて 立ち上り
私の影が 月に映えて 嗤っています
横隔膜の雨音で 辛うじて護ろうとする自我
から、はみ出そうとする 私の渚
お母さんが
「今日は外へ出てはなりません。」 と
完全に締め切った二重窓
カーテンの隙間から 嗤う月
伸ばされた腕を 私は欲しがりました
月に 抱かれて 苛まれて 
弄られて 悦んで そして、
私は猫のような玉虫色の目をして
真夜中になる 
 (汐が引くまで還れまい)
空に咲いた私の輪郭を 啜っては
ニタリと嗤う 月の聲
私を片目の達磨が 二つ並んでみてました
もう、墨を 入れてあげられない 両目から
黒い涙が 流れます
女の業力 支配して
月は色濃く 陰落とし
今宵の雨を 嗤います

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