シャッフル

シャッフル
スタバで混ぜられる泡だらけのエスプレッソの真ん中で
私は沈む
午後の授業を終えた女子高生の唇に
オバサンのような赤が塗られると
私は笑いに殺される
白いマグカップに口紅を付けられるという
特権を競い合う女子高生の唇たちに
堂々と殺されてゆく
 (エスプレッソを混ぜているのは 誰?)
くるくると、回されているのは私なのだと
斜め前のイタリア語を喋る日本人が
イヤリングに軽く触れるように
視線を向ける
   機械仕掛けの店員は
   緑のエプロンで交代制
   店内のミニスカートの制服も
   指定席が交代制
 (かわす、交わす、逃げる、避ける、捕える、交わる、)
きれいなお姉さんに憧れる、汚いオバサンになりたくない女子高生と
きれいなお姉さんのままではいられない、働くお姉さんと
その端っこで ネズミみたいに小さくなっている私、に
クリスマスソングは 平等に降りかかってしまう、から
不公平をかき混ぜたら すぐ、サインペンで
君たちの今日に スペードのエースを並べ立ててやる
私が暴き出しては黙殺する 小さな世界と雑音たちが
黒く熱くなっているうちに 
白色の、スタバのマグカップの中が、冷め切って、
飲み干せない泡ぶくの中心に
私の、心臓だけ
ぽっかりと浮かんでしまう、から、
秘密を隠すように 息をひそめて
私は独りで くるくると、踊らなければならない
長いスプーンと私は 踊り続ける
まるで今日の私が
わたし、を 密告しないように

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