切り裂きジャック

ダンボールがズタズタに切り裂かれて 
ベッドの下に押し込んであった
当然だよね
片付けておいてね、って言ったの、
私だもん
田舎から都会での 新しい暮らしに馴染むために 
箱に入れてきたのは
お茶わんや本や衣装ではなく 真新しい私
裂かれたダンボールは どんなに強いガムテープでとめても
型崩れして もう箱の形を留めていない
もう、この箱は 私を入れて 自宅へ帰してくれない
破れ目を繕うように
針と糸で 縫えたなら 
私たちは やり直せたかな
繕い物で取り繕ったような ダンボールは
窓からの隙間風でも 簡単にへしゃげる
古紙回収の日に ベッドの下に詰め込まれた私の遺体たち
ビニール糸でグルグル巻きにして 自分の手で片づけてゆく
もう、家じゃない処へ行くんだな
私は自分をゴミターミーナルへ放置すると
廃品回収車に押しつぶされて プレスされた
その時やっと見えたのだ
締め切ったアパートで独り 
私を片づけなければならなった 切り裂きジャック
彼をズタズタに裂いたのは 他の誰でもないこの私

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