腐る野菜

田舎からダンボールで送られてきた
白菜、大根、里芋に 手紙
走り書きで 手入れが行き届かなかった、という
詫び状が 一通
私が手伝っていた畑 耕していた土地を離れて
間もない冬の朝一番で 届いた野菜
ずっとこのアパートで暮らせたならば
食べきれた量かもしれないが
意識不明の父と交代で送られてきた 野菜
食べられないまま 実家に帰る
ごみ袋に さっさと仕舞えなかった それらが
日を追う毎に 臭いを放ち黒いカビが生えていく
(父の体にも黒いカビが生えていたことは 知っていたのに)
ごみ袋には捨てきれない想い
ごみ袋では閉じたくない未来
今更どんなに喚いてみても 黒からどろどろの水になる野菜
(父の体に溜まっていく腹水と 頭にはノウスイショウ、
モウ、アト、ハ、時期ヲ、待ツ、ダケ、デス・・・・)
毒素は身体中を巡って 父を壊した
私の本名を知らないお父さんが 育てた野菜
白菜、大根、里芋
そして 行き届かない娘
父を腐らせた私に 一通の封書
走り書きの ひらながなと漢字
「ねえちゃん、はよう帰ってきて、
今度こそ皆で仲良よう、暮らしたいんや、、、」

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