マスク

インフルエンザが流行り出すと
白いマスクが 飛ぶように売れる
ウイルスに感染しないため、
みんながみんなでしたがるマスク
唇から 漏れるイントネーション
頭も つられて 上がったり下がったり
地方出身者だの、田舎者だの、と
都会人に ウイルス拡散
山手線では ゴホンと注意の咳払い
誰もマスクをつけたがる
他人とは喋りたくない 関わりたくない
それなら見えない声を 電子通信
いつでも光のウイルスは
マスクの壁を越えて声を出す
マスクの下の唇が 赤過ぎたなら
白い色で覆い隠せ
口の端を 歪めて笑っていたならば
マスクは顔を綺麗にみせる最高手段
総菜屋店員の帽子とマスク
衛生管理という大義名分
喋らない、喋らせない、アジア系出稼ぎ人を
マスクひとつで 隔てれば
速やかに 地方弁、母国語を
バックヤードで シャットアウト
口封じされたコトバたち
白い帽子とマスクの間から
覗く、黒い両目の真ん中で
何色にも染まりたくはないのだ、と
境界線を 睨んでは
朝から朝へと 叫んでる

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