夏の葬列

西日に揺れる色褪せたカーテンの隙間から
焔に焼かれた夏の葬列を見送る
背を丸めて折れ下がるだけの向日葵は
昼に立ち止まり、夜に顔を奪われたまま
晩夏を歩む
背骨を晒し腕も手も顔も腐らせ
「老い」は立ち止まることができない

夏との闘いを 乾いた涼風が脳裏から消し去ってゆく
遠い波にさらわれた悲鳴、あれは誰の灯だったのか
顔を焼かれた者の墓標
喪失した名は誰が優しく呼べただろう
ただ、横たわることしか後がない無印の花について。

お前の父は蝉の抜け殻ばかり集める一生だったと、
大輪の面影を窺うように
母がうつむいた夏の死骸を並べている

青空は紅蓮に燃え盛り 向日葵の影だけが空へ向かう
その影を追いかけながら走る赤い目の夕焼け少女に
父が与えた花は もう、燃えてしまった、のに
思い出だけが口走る
(ひまわりって、どうしてかれちゃうの?)
(日の光のことばかり語って、もう泣けなくなったから)
私の眼の中で向日葵が咲いて燃やされてゆく

焼けただれた空の隙間を仏間からこぼれ出る線香の煙が
淡い姿をくゆらせて立ちゆくように
私の立ち位置を揺るがす風が
足首のない父を連れ去って逝く
過ぎたはずの熱風が込み上げるたび
私の全身は濡れたまま 
花の骨の在り処をねだる

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