ブロンズ少女

幼い頃に頭を撫でてくれた手のひらたちは
引っ繰り返され 
彼女を叩たり、指さした
(公園で、一人、少女が濡れている)
常識の文字を見つけると丁寧に赤丸で囲みながら
恐る恐るみせた答案用紙
先生たちが出した答えには非常識と赤字で書かれた
(公園で、一人、少女が濡れている)
   幸福の王子は全身金箔だらけで ルビーやサファイアを身に纏い
   公園で人々の哀しみを眺めて泣いていたという話を知っていますか?
   でも最期に遺っていたのは小汚い痩せた親友のツバメの残骸、と
   デクノボウになった自分
(公園で、一人、少女が濡れている)
どこにも帰れないブロンズ少女。傘もささずに固まったまま濡れている。
本当は赤いルビーの瞳で夕日が沈む一日を終えたかったかもしれない。
サファイアのような海を目指したかったかもしれない。ダイモンドが灰に
なるまで、誰かについて行きたかったかも、知れない。
けれど、
少女が一人、デクノボウ
突っ立ったまま固まって、動けないまま濡れている
駅前公園では若い女性議員が一人、車上からの立ち演説。
市民は同意、同意の、大賛成。激しい雨音の大拍手、の中で
呼吸ができないブロンズ少女。病院に行けない少女の胸から
赤い血がどんどん流れて青くなる。倒れてもどこの誰だか、
分からない。身元も不明、町の市民じゃないかもしれない。
だから、だから・・・/だから?
人々が望む「平和」と「幸福」が、高い位置から挨拶すると、
彼女だけを置き去りに「政策」だけが、歩いて行った。

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