いのちのことなど

命のことなど問われれば
とってもエライ国会議員
「七十歳になってもまだ生きて」って 怒鳴ります
「七十歳になったら死ななあかんね」
六十九歳のお母ちゃん
淋しく笑って固まった 父の写真に問いかける
命のことなど知るには命がけ
「なんで死んだの?」と私が聞けば
「病気で死んだ」と 担当医
最期の日に移動させた父のベッド下に転がる小瓶
ショッキングピンクの液体は 
名立たる医師団お墨付き、でも
カルテの開示にない薬
   なぁ、ユキちゃん
   いのちのことを ゆうていかなあかんなぁ
それが 口がきけなくなる父の
いのちのための 命がけ
命のことなど言う国の
命をお金で買う人の
命をお金で葬れる人の
命に優劣をつけたがる人の
命のことなど
いのちのことなど      
2016年「詩と思想」12月号 掲載原稿

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