四トントラック

四トントラックの背に鉄屑ばかり積んでいた
製鉄会社を回って非鉄金属ばかりを探して
使い物にならないモノたちを再利用しようと
かき集めていた、父の会社
工場の垣根になるほどの拉げたタイヤの群れ、
切られた銅線と凹んだアルミ缶、
自分のようなもの、家族のようなものを
抱え込んで走っていた
買ったときは真っ白だった四トントラックは
鉄粉にまみれ、金属に擦られ
鉄屑にのしかかる工場の巨大な磁石に
バウンドさせられて 
赤茶けた場所が広がった
使い物にならないものは
チューブの抜けたタイヤ、
原形を留めないアルミ缶や剥き出しの銅線、
伸びきったバネや錆びついたネジ、でもなく
四トントラックだったかもしれない
トラックを引き渡す日
わたしは荷台とドアの間の梯子をつたって
トラックの天辺で山に沈む夕陽を見ていた
日が暮れても工場から帰らなかった
工場はもう社名の違う看板が掛けられていて
遠くからきた人たちのものになっていた
夕陽に焼け焦げる空と仄暗い山を見ていると
真っ新なトラックに置いてけぼりにされて
なんで連れて行ってくれへんのや!と
泣き喚く女の子がトラックの後を駆けていく
困り果てた赤ら顔で骨太の男の手が
彼女を運転席の横に乗せると
女の子が泣き止むまでいつまでもいつまでも
ずっと、一緒に 走り続けていく

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