雛罌粟心中

「雛罌粟心中」
家を捨ててきたと言う
雛罌粟が咲き誇る赤い心で
死にたいと言う
蒼白い唇は
言葉を噛み砕いたように
真っ青なままで
ならば殺してあげる
私の美学で
私のやり方で
爪先まで咲かせて
散らしてから
止めを刺しましょう
寂しいは寒いに似てるでしょうから
雛罌粟風呂へ行きましょう
赤く咲いても
芥子の花
毒入り風呂で横たわる
貴女は何も知らない
白痴のマリア
手首に紅芥子の花
指先から身体中を
赤く染め
綺麗ね
と笑う白痴のマリア
私の瞳に一枚のモナリザ
切り取ったフレームに追い付けなくて
瞳を逸らせないまま
動けない
人は あからさまな悪意と
精錬な美の前に息が止まる
貴女は知らないだろうけど
毒風呂から剥き出しの
貴女をひざまづかせて
カンパリを無理やり口付けて差し込んだのは
貴女を拘束して
神に見せない為にだけ
力なく従順に開かれる唇から
火のような液体が溢れだし
デコルテを伝う鮮血は
炎となって秘所に堕ちて
雫は身体を焦がす
一人はアオイケモノになり
姫は蛇の舌で啜り泣き
カンパリとカルパッチョ
チーズに挟んだピンクローズと雛罌粟
こんなに美味しいものは
最初で最期ね
私たちは小指だけを
絡ませて赤い夢をみる
ねぇ、明日此のまま死んでたら
それはそれで幸せね
でも運悪く生きてたら
もう一度
貴女の心音の高鳴りを
聴かせてください
貴女は生きて活きて
雛罌粟畑を後にヒールを響かせ
帰ってゆく
でも確かに
弱い貴女は死んだのだ
雛罌粟風呂の中で
魂を奪われた私とともに
遥かなる赤い記憶
雛罌粟心中

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