惜春

惜春
シーツの海に住み着いた赤い蝶が
羽化したサナギを嘲笑い
自由に飛んでいく頃
海辺で泣いていたのは
溺れた人魚
帰れないお伽噺に
還りたい
アスファルトにアカイハナ
が咲くと
潮風の匂いが異国の涙を
誘うだろう
アカイハナに赤い蝶
潮騒には裸脚
同じゆらめきの果てに
楽園と廃園の鍵は
差し込まれて
血を流しながら闊歩する女の
渦を巻く激しさに染まる街
たまゆらの音色に委ねた
ピアノの旋律のさざ波
ゆれる
ゆれる
ゆすられる
楽園は近々廃園に
戻ることを
知るだろう

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