くれない

くれない
まどろみの穏やかさを割いて
昼寝の僕を急き立てるのは
水色の携帯
「あなたのくれた薔薇が今日咲きました。香りが凄く高いの、それでね・・・、あんまりうれしいから、花びらを一枚食べました。」
嬉しそうにさえずる小鳥は
僕のあげた薔薇の花弁を一枚食べてしまったらしい
そうやって僕の薔薇は育つ
彼女の中で育つ
それは僕が梳いてあげる髪となり
それは僕が吸う乳房となり
その奥で流れる紅さと鼓動となり
僕の体液も渦を撒いて彼女に満ちる
そんなにいいものか
僕は庭の隅に晴れやかに咲く
ピンクローズ一本にハサミを入れると
部屋に持ち帰り茎に沿って葉を切り落とす
次に棘を抜き取る
茎一本に重々しい冠をつけた女に
僕は彼女を重ねる
寝室で浴衣から白い体をはだけて
僕に全てをゆだねきった
健気な女を思い出す
僕は彼女の最後の冠(とりで)を優しくひきちぎると
サディスティックな欲望が正当化される
恥辱の香を放ちながら
一枚一枚と着脱される彼女
見られて怯えながらも求め続ける
彼女の潤んだ目を思い出す
僕にしがみついて
赦しを請いながら
啼いて悦ぶ彼女の海底(うみぞこ)
指を這わせて
あやつった夜
爪弾く僕の指先
泳ぐ体
壊れた時間
狂いかけの彼女
くれないに染まったふたり
薔薇の花びらを全部ひきちぎった時
僕の指はしめっていた</span

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