名刺

手渡す人の人相が好かろうと悪かろうと
ついでにナントカ法人取締役だとか
はたまた○○財団ナントカ会長だとか
いつまでも覚えられない本人の名前と
どこまでも続く法人名・財団名・団体名
本人の名前より自己主張する予備知識が
独り歩きをどんどん始めれば
そのお墨付きを
利用する人 誉める人
たった一枚の紙切れで
年収何千万円がチラついて
握手する人 手を結ぶ人
   (そして口が聞けなくなる人の
   (居場所のない居場所をつくって
   (押し込めたがる人
社会人なら名刺を交換するのが礼儀だろ、
と 怒鳴り散らす人の
日本人は全員社会人だろ、
と 思えば都合のいい人の
礼儀が私の指を傷つける
私は名刺を持たない
宛もない言葉だけを頼りにしている奴に
どんな社名や配置部署が似合ったあろう
選ばれた良品の上質紙たちと
有名デザイナーのレイアウト
東京4号から大阪9号の圧縮サイズの中で
生息する君たちの暗号が前進して
ちいさな草花を踏みつけて行く
酔っぱらった社会人の
スマホで作れるお手軽保障
その紙切れの上で
人が浮いたり 沈んだり

tukiyomi について

著作権は為平澪に帰属しています。 無断転写等、お断ります。
カテゴリー: 02_詩 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です