月       


月

          (乱太郎)
淋しげに唄う
恋などとっくに忘れて
靡く淡い音色
月の後ろ髪が解かれるとき
湖面の中央辺りに
漂う
在りし日の君の輪郭

          (月夜見)
在りし日の恋ひとつ
水面に写るは
偽物の月の形
拾えど
掬えど
盗めない月
私の手は濡れていました
あの人との歳月を
泣くように

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木枯らしに泣く

木枯らしに泣く
木枯らしに泣く
風に絡まる
褪せた新聞紙
転がるメイプルの葉
靴底から命の寝息
底知れぬ湖の
深い蒼
木枯らしに泣く
紅葉を宿した瞳から
七色の哀しみ
一粒

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あなたに

あなたに
あなたに
あなたに
あげれるものがあるとしたら
散りゆく薔薇
風の流れをゆるめて
まだ紅い華のまま
頑な信念のように
あなたの氷山の中で
色も形もそのままに
凍えるように
閉じ込めて
胸の芯で
咲かせてください
もう
あげられるものなど
とうに無くした庭に
一輪の薔薇が
ぼとりと土に鎮む前に
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例えばそれは
赤ちゃんの握り拳から
例えばそれは
浅い眠りから
例えばそれは
活火山のマグマから
混沌と極彩の向こう側
ゆらゆらと
浸透してゆく
言葉にならない文字

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バースデー

バースデー
あなたの口に
シフォンの肌を
仄かなは炎は
あなたを温め
歳月が丸みを帯びて
一年の情熱に
火を灯す
この日
初めて泣いた
あなた
金木犀の薫風に寄せて
黄金の祝福と
月桂樹の冠を
今日のあなたに
届けたくて…
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たそがれる

たそがれる
たそがれる
経ち ゆかば
秋  きたり
経ち ゆかば
飽き きたり

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月齢 1.5

月齢1.5
海が荒れてくる
深い底から彷彿と
なにか躰を流れていくような
小さな月を身ごもるような
潮の渦 月の引力に支配された
躰を持つ「女」
苦い夜 甘い夢 掠れた声
私 月齢 1.5

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曼珠沙華

曼珠沙華

曼珠沙華 花冠は燃え尽きて 褪せた涙を夕べに浮かぶ
紅(くれない)の冠(かん)燃え尽きぬ我が永き真夏の恋のぬけがらとして

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おやすみなさい

おやすみなさい
お休みなさい
大松が炭になるように
マッチが空箱になるように
人の息がリズムよく脈を打つように
忍んでくるのは
黒いルービックキューブの欠片
パズルの一ピースを
張り終えて
完成した地図に横たわり
あなたは朝まで船出する
おやすみなさい
よい航海を

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たそがれる

たそがれる
砂浜にポツンと
白いベンチがひとつ
用意されていた
私はそこに座って
地平線に沈む
夕日をみていた
青かった波は
茜色に染まっていった
私はただ
沈んでゆく夕日を
眺めていた
私がこのベンチに
居座る前に
何人かがここを
通過したらしく
消えない足跡が
ベンチから
北に向かって
遺されていた
私は
白いベンチが
紅蓮の炎に照らされたとき
持っていたボールペンで
落書きした
このベンチに座った者
これから座る者よ
言葉だけおいて
私も逝く
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