深海魚

深海魚

潰された光の魚群
盲しいた魚の涙は
静寂に押し込められた
鱗の形
珊瑚に隠した憂いが
光にゆらめく
届かない
羨望の泉水
私の真昼は奪われ続け
動くことも海流にのる術もままならず
幻影だけが水面に浮上し
一片の残骸も遺さないまま
私の訃報が水底で渦を巻く
迷子になった
私の亡霊が
漂流して
盲目に
魂のよみがえりを繰り返す
夜明けに
憧憬の念を抱いて
迷妄の波にさらわれた
己に泣いてみても
黎明も届かない
毎日に
今日を沈めて
目を閉じる

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ネーサンが行く

ネーサンが行く
ネーサンが行く
あたいのカラダで
あんたが触れてないとこなんて
ないんだからね
知ってるくせに
相変わらずの
指使い
変態!
変態!!
変態!!!
そんなに
攻められちゃ
慣れた
あたいだって
あたいだって…
イクゥ〜〜!
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大好きよ

大好きよ
もう少し 早く出会えば 私たち 一緒に泳ぐ魚になれた
長い指 そこに光る指輪には届かぬ愛の距離が流れる
もし君を 私が裏切ることあれば 殺していいよ あなたがすべて
街中で キスをしよう手を繋ごう お酒も飲もう 愛も語ろう
あなたより 先に死んだら ごめんなさい 私は君の 守護霊になるわ
指の間に いつも挟んで吸う煙草 そんな私にいれたらいいのに
今更に あなたを想うと泣けてくる あなたが好きよ こわいくらい
一編のあなたの詩にくるまって眠った夜が何度もあった
意地をはり優しく出来ぬ私にも 全てを認めて赦してくれた
大好きよ世界で一番大好きよ あなたがいると 私は無敵

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きみの音

きみの音

きみはぼくの歌であり
詩であった
きみはぼくの透き通る風
静かな湖水
きみがシーラカンスだったころ
ぼくはアンモナイトだった
君が活火山で怒っていたとき
ぼくは冴えない紙切れだった
きみがぼくと歩んだ道は平行線
一番近くできみをみて
一番遠くに感じてた
きみ
もういいよ
きみが地球の裏側で
クリスマスを迎える頃
ぼくはたぶん砂糖黍を
植えている
植えているんだ
飢えているんだ
餓えていたんだ
パキリと折れた砂糖黍
きみにあげるハートのチョコが
ぼくのために割れた音
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アディクト

アディクト
麻痺した詩文
解読不明の怪文書
死海に沈んだ遺跡
白い部屋には
彷徨える頭脳
細胞分裂を繰り返しては
前途多難の前頭葉
一途な道に
立ち入り禁止の立て看板
ストーカーが
グルグル廻る
終夜(よもすがら)
もしかしたら
君にアディクト

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蝶へ

蝶へ
悲壮とは 悲愴か蝶よ晩秋を 越えれぬ羽で私のもとへ
駕籠からは 逃れぬ宿世 嘆くなら 僕の名を呼べ 月夜の空に
羽ばたきを封じた犯人 私なら その鳥籠ごと 壊してやるから
褪せた名に 色彩添えた 貴女の名 花の名を持つ それこそが罪
届かない それくらいじゃ届かない 私を呼んだら いつだって…
さよならと 愛してるを綴る指 強く結べよ 私はここだ
どうせなら ごめんなさいより もう一度 聞きたい言葉 【愛しています】
自惚れて いてくださいね 酔うくらい 溺れているのは 昔から僕
罪咎を くぐり抜けてやってこい 包んであげる 壊れぬよう 壊さぬよう
儚さや 悲しみ憂い 脱皮して 貴女は眩しい 言葉を散らす
恋人よ 蝶に美化され 泣くならば 私は貴女を照らす 月でありたい
暗闇に 蜻蛉のように舞う蝶よ 貴女の哀しみは 僕の牢獄

(私信短歌)

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絆(乱太郎・月夜見)


絆(乱太郎・月夜見)
悲しみを
癒やしに変えて
言の葉を
紡ぐ指で
私に触れて
月夜見
触れたいと
言葉重ねて
愛撫する
迷い込んで
二人の森に
乱太郎
ダンジョンで
探してください
紅い花
あなたのものに
なった印を
月夜見
薔薇の精
肌朱く染め
永久(とわ)の舞
重ねた指は
渦巻く契り
乱太郎
悠久に
詩を描きましょう
君の手に
添えれるならば
私のてのひら
月夜見
てのひらに
わからないまま
文字ひとつ
でもあなたなら
むねでかんじた
乱太郎
抱いてみて
私の全て
捧げても
惜しくはないの
君をください
月夜見
あなたへと
僕の捧げる
ラブレター
恥じらいさえも
封じた切手
乱太郎
プライドも
あなたの前で
通じない
言葉塞がれ
身体が開く
月夜見
信じ合い
罵りあった
夜明け前
忘れられない
二つの孤独
乱太郎
闇に舞う
孤独二つを
捕まえて
放ってみれば
絆という蝶
月夜見
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眼光

眼光
あなたは言葉を探す
本棚の深い森に
真昼を横切る猫の瞳に
君は主張を述べる
褪せた選挙ポスターに
迷い犬の張り紙に
人々は見つめ続ける
車に敷かれた猫の白目
保健所に運ばれる野良犬の陰り
私たちは詩を綴る
滲んだ万年筆のインクから
本当に伝えたいのは
青い涙
眼のスクリーンに焼き付けられた
日常化する赤と黒を
鋭利な刃で記録する
行間の隙間に想いを折り込み
文字に祈りを託してみても
ペン先から滲んだ染みが
じわじわ波紋を投げかける
それぞれに与えられた質問用紙
青いインクは「空」を描く
胸にインクを滲ませて
私たちは寂しく停電するだろう
それでも遺さずにはいられない
記憶の森に沈まない太陽
夕映えをに轟く雷鳴
稲妻のような瞬き
全ては
見開いたままで

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晩夏をゆく(小詩 四編)

晩夏をゆく  (小詩 四編)
【晩夏】
線香花火は湿って
微熱は褪せてゆく
なのに
鼓膜から
蝉時雨が
鳴きやまない夜
【立秋】
まだこない手紙を
待つような
忘れた人から
ひょこり
電話がくるような
女の第六感が
少しずつ
紅葉するような
【彼岸過ぎ】
あの人たちは
ちゃんと
往けただろうか
燃えるような
彼岸花の合間を
【故郷】
ここ以外
どこにふるさとが
あるのだろう
桐の箱には
干からびた
私のへその緒

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妄想不夜城

妄想不夜城
花が咲くのは昼などと
決めてしまったのは誰ですか
月下美人は夜に咲く
恍惚を匂わせて
激情に小さく悲鳴をあげた
私の城は月の城
深夜に浮かぶ月光花
欠けたり満ちたり消えたりの
たどり着けない蜃気楼
花は静寂に覚醒し
不眠の芳香を放ちつつ
瞼をあけたまま夢を見る
今宵限り花は狂人(くるびと)
紗をもがれるように
薄い粘膜に誰かが痕をつていく
零れた夜露に花が泣く
次から次々花は咲く
私は城から出られない
城が花に埋もれて
狂人廓(くるびとくるわ)になりました
花が咲くのは昼などと
決めてしまったのは誰ですか
月下美人は眠らない
夜に抱かれた春の性
誰も知らない秘密の花弁
一夜限りで散らしましょう
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