終焉に出来ない恋を笹舟に 乗せて果て往け 彼方まで
流れゆく この魂とこの身体 たどり着けない 貴女の海に
未練という 文字 短冊に書き写し 笹の葉ゆれて 私もゆれて
死にたいと想うくらい 焦がれても 漕げないオールを掴んだままで
雨粒が 脳裏を濡らす暗闇に 昔の君が 零れ溢れて
会いたくて 僕だけずっと会いたくて 君は離れた 悲しい距離に
悲しみを 笹舟に乗せ 流しても 流してみても 沈んで崩れ
抱いてみたい
何も知らないきみを抱いてみたい
音楽よりも激しい音を奏でる躰
遮断した胸の鼓動
時々寂しげな眼差し
素直になれない強さ
君の全てを暴いてやりたい
何も知らないのは
お互い様だから
人は微熱を重ね
夜に手のひらを握りしめ
独りでないことを
確かめたがる
その夜を二人で越えよう
何も知らなかったその瞳に
一体何が映るのか
光 溢れる未来
重ねた温度から広がる地平線
その海原で君は自由に泳げるだろう
全ては君の手の中に
僕さえも虜にして置いて
何でもも知ってるくせに知らないふりする
薄情なきみごとを抱いてやりたい
(とある、少女に・・・)
空中庭園
用意したものは
ハルシオンと
カッターナイフと
包帯
壁には壊れた時計
床には硝子の花が咲く
お互いの手首を傷つけ
血の赤さに安堵して眠る夜
幻覚の森で落ち合って
オルゴールの棺に収まり
夜は宮殿を抜け出し
裸足でピアノの鍵盤の上を踊ったよね
君は永遠の乙女
黒いレースのついた喪服で僕を迎え
幼さの残る激しさで僕を射抜く
そのままで居られなかった苛立ちは
伸び始めた手足たち
汗ばむオスの胸板の下で杭を打たれ
僕はオンナという遺伝子組み換えの罰を受けた
男という生き物は
僕の背中に腕を伸ばすと
「コレは邪魔だな。」
と笑いながら翼をもぎ取り
僕に足枷をして繋ぎ止め
夜しか知らない生き物に作り変えた
人殺しにも似た行為を毎夜繰り返し
僕は残酷になった
もう庭園(くに)には帰れない
なのに君がくれた一輪の薔薇が
故郷(ふるさと)を恋しがるので
地獄にいても
晴れた日は空を見上げて涙が出たりする
あの二人で覚えた遊びは封じられずに
思い出が骨を砕く
帰りたい
還りたい
孵りたい
用意した物は
ハルシオンと
カッターナイフと
包帯
今から逝くよ
肉などそぎ落として
白い粉になって
透明だけが支配する
二人だけの
空中庭園(おうこく)へ
虹
虹を あなたにあげたいんだ
たくさんの色をして
空に続く橋のようで
きっとふたりで渡れば
夢にたどり着くはず
きみの病気も
あの架け橋の向こう側には
きっとないはず
だから
走って走って
雨がやむまえにって
太陽が沈むまえにって
祈りながら走ったのに
ぼくの手には
転んだ時の泥しか
つかんでいなかった
それなのに
きみは
私が見たかったのは
虹じゃなくて
泥だらけのあなたなの
なんて笑うものだから
ぼくは泣けてしまって
泣けてしまって
西日がさす
病室で
ぼくの顔に
うっすらと
虹ができてしまうんだ
サイレン
どこかで
サイレンの音が聞こえてきます
もう春です
日向ぼっこの子犬は
欠伸をしているのに
どこかで
サイレン音が聞こえてきます
今日は快晴
白梅が開花して
いい匂いが漂ってきます
だけど
どこかで
サイレン音が聞こえてきます
どこだろう
サイレン音
探しても探しても
見つからない
私は絵にかかれたような
真昼が嫌になって
側にあった
ペインティグナイフで
午後の憂鬱を
斜めに切り裂いた
それでも
サイレンが鳴り止まない
あぁ
そうなのか
そうだったのか
思い出しました
私は知らないうちに
孤島に独り
生き残った
最後の人間
だったのですね