青空から涙

青空から涙
青空を折りたたむような
終い事に追われ
広げた風呂敷も
今となってはたためない
こびり付いた友情を
優柔不断と殴り書き
サヨナラと
一言書いた紙飛行機
青空に向かって
飛ばしてみたら
たちまちの曇り空から
大粒の涙が降ってきた
私が慌てて折り畳んだのは
あなたからの
最後のラブレター
だったのかもしれない

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徒花

徒花
恋しきは 春咲く花ぞ 桜草 我は徒花 捨て置きたまえ

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未完成の・・・

未完成の・・・
未完成の
私は身体に
金色の蛇を飼っています
嫉妬の流動体が
這いずり回る
未練と栄光だけが
支配する半身
私は
紫の鱗の分だけ
秘密を持ちます
爪先形の秘密たち
肌を締め付け
こびり付き
過去の恋を
絞りだそうとする
屈折し挫折した
絵文字のような
サヨナラの冷血さ
私は表情を隠したまま
唇を閉ざし
誰にも知られぬよう
あなたを
アドレナリンから
追い出そうと足掻きながらも
滲み出る終わった恋に
まだ
涙がでます
私は上手に苦悩する
だから
この想いよ
最期まで
未完成であれ
未完成であれ

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リリー

リリー
リリー
お互いに惹かれ合う
レース糸でも
こんなにも
まばらなモノたちだらけで
一つになろうとしている
ねぇ
リリー
どうか教えてよ
こんなにも
違えた道を選びながら
あなたは
誰と細くても永い糸を繋げて
多彩な作品を
完成するのだろう
ねぇ
リリー
レース糸もリリーって呼ぶ国があるんだよ
そして
俯く白百合も
リリーと呼ばれる
だから
気付いてしまったんだね
僕たちは
同じ顔で編まれた
同系色を覗き込んでは
きっと
自分だけを
愛していた
奥底に秘めた
絡み合う解れに
目を背けて
君を
愛していた
君だけが
僕の完成品
君しか
愛せなかった
リリー
白百合よりも
たおやかで
繊細な糸のひとよ

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月華の祈り

月華の祈り
月華の祈り
まだ
薄紅の蕾のまま
あなたの指先の呪文に濡らされて
開いてみたい
女の子から
女という華に
狂い咲く闇夜の怖さ
しんしんと
冴え渡る
月夜に冷気
絡み合う四肢
幾度も 幾度も
甘い血と蜜を請う
あなたへの微熱に
苛まれた私
身体
柔らかな曲線を
くねらせては
その長い指で
肌 薄紅に染め上げられ
動きに合わせて
私 鳴く
どうか
この濡れそぼる華を
卑しいと
そのまま
捨て去らないで
いてください
あなたとなら
一輪挿しの
薔薇色の夢
永久に
朽ちるまで

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人は泣いて生まれてきたのです
この世の光
未来と夢の翼を
信じて
人は泣いて生まれてきたのです
老いてゆく
置き去りにされる
孤独
夢の翼を休めるな
光射す文字を描け
けれど
忘却の能力は
電子辞書から
文字を暗闇に茫滅
生とは
如何に
自由で拘束された人生を
涙で彩る
産声をあげた
その日から

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少年

少年
新聞紙とは
正反対の方向に
飛び出したがる
明日の犯罪者
遠い国で
死んでゆく
豊かな心の子供たち
日本で壊された
濡れて腐った伝達神経
解体された合体ロボット
弱肉強食のナイフを
握らされたまま
踊らされて
未来を
灰色の空と濁った海の狭間に
祈りを詰めて
流した小瓶
異国には
届かないまま笑われて
地上が微かに揺らいだら
いつかの
少年は
明後日の
護衛車の中で
ゆらり
ゆらり

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恋人の種

恋人の種
空に手が届くくらいに
馬鹿みたいに幸せ
海の底で人形姫に
プロポーズされるくらい
馬鹿みたいに幸せ
君が産み落とす恋人の種
私が産み落とす恋人の卵
目眩がする長いキスをしたあと
那由多の邂逅の向こう側
小さな庭に
淡い光を注いで
君の種を産めますから
僅かな輝きの果て
豊かな信実を育てみてもいいですか

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爪紅

爪紅
思い出を欺いた朱印は
冷たい指先を恋しがって
月明かりの夜に
主のいない部屋で
紅の泪を
足先に残したまま
愛しさ事
剥がれてゆく

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赤い部屋

赤い部屋
微睡むことさえ赦されない
赤い電灯の下で
君の舌を引きづりだし
僕は口腔から僕を入れる
開かれた四肢は朱に染まり
君の中の僕が脈打つ
キャミソールドレスから
爪先から
唇から
肌から
はだけられ
晒された全てから
鼓動が脈打ち
君はピアノの鍵盤の響きに合わせて
流動体の赤血球を泳ぐ
蛇の館に一人
囲まれたカナリアは
泣き顔は見せず歌うだけ
湿ったのは這わせた指先ではなく
遠い雨の日の赤紫のアイリスの芯
誘ったのは君
暴きだしたのは僕
二人が赦していたのは
欺瞞と虚飾の愛の調べ
だから火を点けないで
薄闇の天井に
ポツリ酸素を請う
赤い電球の色彩のままで
独りぼっちの
暮れない夜の
過ちの朱印
文字のない部屋
空っぽの鳥籠
安らかな黒い柩
赤い孤独が滲む部屋

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