11月11日のピリオド

11月11日のピリオド
天気は快晴
気分は少し上昇気流
だけど
ぼんやりと太陽に
輪っかがかかった
空に大きなピリオド
接続詞も句読点もなく
突然の別れに涙雨
紫に滲む快晴日和
あなただけの
好きが
好き過ぎると
月日がどんなに
始まりの1を示しても
時計は既に
真夜中で止まったまんま
二人三脚で描き続けていた
キャンパスには
太陽と同じ大きさのピリオド
(ゴールインなんて終止符みたいでイヤだね)
さよなら
はじまりから別れが決まっていた恋
別れから始まったやり直しの積み重ね
(壊れちゃったジェンガ/誰が壊しの?)
私は残されたまま最後尾の電車に揺られて
どこまでも
どこまでも
コレデヨカッタと
11月11日の始まりの1を
指でなぞると長い一本道
(位置は1から程良く遠く遠く)
最後尾から1を目指した三人の歴史に決定打
祝杯の涙を あなたにも あなたにも
ありがとう○(マル)

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汚染

汚染
吐き出された
放射能汚染が
じわりじわりと
白紙をレントゲン写真に
すり替える
私は毎日
レントゲン写真を
撮りに行く
写し出された
廃棄物の中に
片目から涙が
溶け出した
ケロイドの
女の子の人形
暗闇の中の
一瞬の発光で
全て見抜かれ
私が私を廃墟に
仕立て上げてみる
頭の中には曲がっままの
抜けない釘
寂れた看板をぶら下げて
私の灼かれた肺から
置き去りの人形の右目は
オゾン層を見上げては
酸性雨をまだまだ
降らし続けている
レントゲン写真は
私の輪郭を溶かして
白く光っては
骨を削りとってゆく
禿びたチョークで
描かれた身体には
関係者以外立ち入り禁止

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打ちのめされて

打ちのめされて
安いアパートだから
穴の空いた天井からは
雨漏りとちょっとの土砂崩れ
時間給七百五十円の中に
含まれた失敗と罵声に
自分を二割引
牛丼屋で白いオマンマは
牛肉抜きの大盛で
紅生姜丼に早変わり
静かすぎると
気が滅入るから
スピーカーの音量を
最大限
人は独り
言い聞かせて
言い聞かせて
眠れ 眠れ
突然の真夜中のメール
「ねぇ、元気にしてる?あまり頑張りすぎないでね…!」
何気ない優しさに
テルした大学の友人
タイムスリップした 学生時代
賑やかな
思い出に花が咲き
明日のバイトに花が枯れ
夜の静寂(しじま)に
涙が溢れ
声を殺して泣いてみては
友の優しさに
打ちのめされて

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リカちゃん人形

リカちゃん人形
どうぞご自由に触って遊んでいってください。
  その後は、元の所に片付けてください。」
デパートの一角のおもちゃ売り場に、
汚いなぐり書きでかかれてある看板のすぐ下で、
私は、恐ろしい光景を目にした。
なんと、パンツ一枚で仁王立ちしているリカちゃん人形。
全くどこの変質者だ!どこのフィギュアオタクだ!
私は、リカちゃんに白地に小花の半袖のワンピースを着せると、
まじまじみながら、心の中で、
「これでよし!」
と、呟いた。
・・・途端、
「お母さん、あのオバチャン、ナニやってんの?あの人形触れるの〜?」
という五歳くらいの女の子が、私を、邪魔者扱いする。
・・・・すいません。変質者は私です・・・。
そそくさと、その場から離れると、自分はリカちゃんに振り向き、
 「君は、少女の夢であってくれ!」
 「決して、男のロマンになるな!」
と、またしても心の中で呟いて、おもちゃ売り場を後にした。
バスの中で揺られながら、
今日の私はなんて良い事を、したんだろう!
と、自分を褒めた。
家のベッドに横たわると、また違った感情に襲われた。
果たして、私は本当に良いことをしたんだろうか・・・?
リカちゃんの大きな豪邸「リカちゃんハウス」
父親のピエールは、外国籍の有名指揮者
両親は仲睦まじく、美しい姉妹で、三時にはティータイム
たくさんの美しいドレスと靴で、高級クローゼットは、休む暇なし
王子のようなリカちゃんのボーイフレンドの、ワタル君
何不自由ない絵に描いたような貴族生活
女の子なら誰もが憧れる完璧な人形の国
でも
でも・・・
決してワタル君はリカちゃんとデートしても、
彼女のショーツを引き破ったり、
ましてや、リカちゃんに、
カエルを裏返しにしたような体位をとらせたりはしないだろう。
せいぜい結婚したとしても手をつないで眠るだけで
「二人の赤ちゃんは、コウノトリがキャベツ畑でさらってくるのさ!」
なんて、キザなセリフを吐きながら、ほほえむだけの王子様
私は、昼間のデパートで、
パンツ一枚で仁王立ちしていたリカちゃん人形の健気さを思い出す。
 「どうぞ自由に触って遊んでください!」
あの看板は、まぎれもないリカちゃんの叫びだ!
 「私を見てください。豪邸も、
  ステータスも、何も持たない裸の私と向き合ってください!」
リカちゃんは、人形からオンナになりたかったのだ。
弄ばれると知っていても、男の重みと熱さを感じたかったのだ。
少女がセーラー服を脱ぎたがるように
ミスドのフレンチクルーラーの甘さを知りたがるように
腕時計の針は、ずっと真夜中を指すように
彼女は祈っただろう。
人形の涙は、官能の味がする
仁王立ちの裸のリカちゃん
その姿は、少女が「春」に目覚める孤独の色だ

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世界に微笑

世界に微笑
病院の待合室で
吼えまくる老女の悲命(ヒメイ)
で、本が読めない
苛立ちの後ろ側には
きちんとアマチュア精神分析者たちの指定席が用意されていた
子供はアメが欲しいとねだり
五病棟では甘い尿を蟻たちが待ち受けている
商談成立に足早に歩む医薬品セールスマンの声の高揚に追いつくためには
彼女のエフカップが必要だ
人は速さの違う時計を飼っていて
その連鎖作用が地球を裏側から手回しする
思考が残酷な人生の支配者という結論をまぎらわすために
とりあえずバスの待合室に書かれた
 「SEX 」
の、スプレー文字に二本の縦線を入れて
 「S 田 X 」
にしたのに
まだ、どこかのバカヤロウが落書きした
 「プリンセスマンコー」
のイリュージョンに、笑いが止まらない

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てのひら

てのひら
簡単に嘆くことよりも
喜ぶことを覚えなさい
死ぬことよりも
生きることを学びなさい
世界は君が思うほど
怖いものではないのだから
泣きじゃくる私の頭を撫でる手は
優しいぬくもりを帯びていた
あなたの唇から説かれた生命(いのち)たちが
春の日だまりの中目覚めるので
私はこみあげる涙をおさえきれない
春憂いのせいだよと
叱ってください
通過点の一つだと
笑ってください
でなければ求めてしまう
木漏れ日のような
あなたのてのひら

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憧憬

憧憬
私が 滅茶苦茶だった頃
あなたは静かに現れた
世界が怖くて暴れる私の
頬に両手をあてて
  君に幸せになってほしいんだ
と 真剣に私を見つめた
深い慈しみと悲しみをたたえた瞳の炎
それは今でも絶えることなく静かに私を照らす
張り詰めたピアノ線に
桜の花片(はなびら)が触れて
音楽があふれだすように
私の中で あなたがこみあげる
 君を信じているよ
その言葉が今も私を生かしつづける
あなたは私の傷にそっと触れて泣いた人
そして奥さんを一番愛している人
真っ直ぐ振り向きもせず 家族のもとへ帰る人
憧憬
  それは
     多分
       恋の 
         銘つ名だ

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叫号

叫号
あなたを
あなたを必要としている人がいます
今日のことは絶対忘れません
と 笑顔で言うおばあさんは
明日になると私の事を
忘れる病気だ
下半身不随のおじいさんを抱えると
今まで生きてきた命の重みが
寄りかかる
大学時代
寮に遊びに来た友人は
四季のない国で 夢に向かって戦っている
暗闇の中でパソコンを開き
先人たちの人生観と人間性に
哲学を模索する
息苦しさにも目を閉じて
眠れるようになったのは
大人になった証拠だと
言い聞かせる
   平和だったら神様はいらなかったのに…
幸せのパラドックスを空に向かって放り投げてみても
神様までは届かない
寝苦しい夜と、怠惰な朝を
認知できなくなる位生きた頃
スーパーの裏でつくられた
安いスチロールのパック詰めが
「お迎えですよ。」
と、最期にやって来る事を
私は知っている
だからあなたに会いたい
私の見てきた円みのない、淋しさを 哀しみを
溢れるほど抱えた声で
 この世界は素晴らしいと言って!
 僕には君が必要だって言って!
 産まれてきて良かったと思わせて!
と泣き叫ぶから
あなたには私を私ごと受け止めて欲しい
誰にも一人
誰かが必要なのです
あなたを
あなたを必要としている人が必ずいます
…まるで
暗闇でも光の花が咲くと
信じて待つ子供のように
行き場のない夢と
幼い愛をもて余して
私はあなたの名を呼ぶことでしょう

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暗闇

暗闇
目を閉じましょう
そこに暗闇はありますか
いいえ暗闇はありません
今日の母親のヒステリー
徐々に削られていく
彼女の海綿状組織
目を閉じましょう
そこに暗闇はありますか
いいえ暗闇はありません
昨晩の止まらない父親の咳
私の未来を哀れむような
泣きそうな顔
目を閉じましょう
そこに暗闇はありますか
いいえ暗闇はありません
静寂を破る飼い犬の
吐き気のような嗚咽
聞こえすぎる私の耳
愛すべき家族よ
時計は午前零時指したまま
黒く壊れました
もう私達は白い息継ぎを
やめてみても
赦されるでしょう
目を閉じましょう
そこには暗闇はありますか
はい やっと在りました
安らぎの木箱の中
瞼の奥に優しい優しい
暗闇が

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ぬけがら

ぬけがら
蝉時雨の森で
命がけの優しさに
胸を射抜かれる
繁華街の林で
初めて出会う声に
頭を撫でられる
海辺の見知らぬ駅で
いつか私の描いた絵を
見つけては暖色系の色を混ぜる
デジャブのような旅を
繰り返しては
私は春夏秋冬を生きてきた
言葉に
出会いに
秋雨が降り続く
頑なな蛹は
やわらかくなって
人づてに破られていく
私は
黙ったまま泣いた
透明になったぬけがらに
降り注ぐ雨は
殼をまあるくつつみこみ
私の季節を
真っ白に再生させた

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