されど愛しき日々

されど愛しき日々
朝寝坊 昼間は女房 夜は猫 貴女の狂態が 瞼を焦がして
月明かり 暴かれた肌 盃に 私は奏でた 貴女の音符
黒髪は 貴女の為にのばしたの その一途さが 指に絡んで
マンゴーの 味付けパンで塗り付けた 君は私が作った御菓子
全部みせて 全部聴かせて 哭いてみて 征服された女の器
甘い酒 ねだる猫の目 玉虫に 潤んでいたのは 瞳と秘蜜
愛してる 何度も何度も繰り返す 僕の声は壊れたデッキ
君に痣 青紫に 噛みついた 僕は月夜のアオイケダモノ
優しさで くるんだような 独り占め 足枷の名はピンクのテディキュア
ライチ酒にオレンジ割りもいいわよと 見つめていたのは小さな黒猫
指先に 貴女の感触が 絡み付き 動けないまま 風の吹く夜

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双六ゲーム

双六ゲーム
人生ゲームのサイコロは
気まぐれ気分屋の裏表
一進一退が一心一体
一石二鳥の好都合
三歩進んで二歩下がる
罰ゲーム
仏の顔も三度まで
出た目
出た目
デタラメ人生
私はあなたにはに抱かれて
蝶になる?
いや丁半出揃いました
姉御肌
野球賭博に猪鹿鳥の言いなりに
金は天下の回りもの
一時休憩が一時求刑
網走刑務所脱獄不可能
叶 姉妹がやってきて
金と色気で貴方を飼い殺し
サンPースの楽園で、
今度こそはのゴールイン
サイコロに踊らされても
デタラメに
できない
酒と女と男と涙
飲みすぎたのは
貴方のせいよ
弱い女の強がりを
抱き締める為に
歌うのは
男と女のラブゲーム
ふたりの行く先はぁ〜ホテルぅ〜♪
そこで、
女はスタートして
男はゴールし終わらせた

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晩夏を逝く

晩夏を逝く
名も知らぬ街の
商店街の小料理屋の階段に
仰向けの飛べない蝉 一匹
頼る身ないらしく
もがく足に
人差し指を絡ませたのは
多分
私の気紛れ
お節介と寂しさの狭間
蝉は指に絡み付き
強く指を刺して
みつからな蜜のかわりに
強く強く指を噛む
路地裏に樹はない
ましてお前
最期の力強さ
人間に反旗を翻す
もう啼けないお前を
コンクリートの
樹にみまごう黒塗りの
看板に見捨てた私を
その玉虫色の瞳が閉じるまで
恨んで私の逝く人生に
来年
偽物の森で会おう
できれば
命がけの恋の仕方など
教えてくれれば
私は
人差し指分
救われるだろう
なぁ、お前
蝉時雨の啼く森で
一緒に泣こうか
叫ぼうか

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おばすてやま

おばすてやま
となりのおばちゃんが姨捨山に捨てられてしもうたんやって。
そういえば夜中に実娘と婿養子に虐待受けて叫びよったもんなぁ。
それにあそこのおじさんんももうアカンやろ。
脳梗塞で金ばかり使う厄介者やって。
全く怖い世の中になったもんやなぁ。
食卓でしみじみと健康の有り難さを
囃し立てる父母たちの他人事は
母の膝関節の激痛と
父の手遅れの肝炎を笑っていた
昔 熱を出せば
苺がほしいと泣いた娘に
なんとかして苺を真冬に手に入れてきた母
難病とあらば祈祷まで頼んだ父
独りで何でも出来るようになった娘を
鏡が映したのは
荒れ狂う逆髪ボサボサに 髭を生やした山姥が
姨捨山の入場料金を風呂に入る前に銭勘定していた
とは知らない両親
慈悲喜捨の四無量心の「捨」が流行過の時代
姨捨山は 今日も満員御礼
姨捨山で 今日もコロリ

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月のアリス

「月のアリス」
喪服のアリスは歌う
君だけの黒レースの下に隠した
レクイエム
(チェシャ猫は夜遊びのし過ぎでハートのクィーンにギロチン刑)
アリスは探す
時間ばかりを気にするウサギ
追いかけて
ナイフで滅多刺し
(これで時間を気にせずに楽に笑って)
硝子がアリスを写し出すと
喪服のアリスは透明に写る
金髪は白銀に肌は陶磁器に
(鏡は嫌いよ!嘘ばかり!だから魔女が好むのよ)
月のアリスはワガママで
星のアリスを探してる
(一緒に読もうよ、マザーグース、貴女の為に鮮血を一滴残らず飲み干すわ)
貴女の為の舞踏会
今夜もまた、地上に時計仕掛けのウサギたち
夜遊び上手なウサギたち
ハートの女王のいいなりに
チェシャ猫は野良猫のうめき声
生死のゲームを
満更に
可笑しすぎて笑うアリスは
地上をみては
大笑い
私はここよと
大笑い
泣いて見ていたのは
星のアリス
私はここよと
夜を終わらせる
(ねぇ、私たち同じ血でできてるわ)
星のアリスの中に月のアリス
ひとり救えば
ひとり死ぬ
天使のかんばせに
ご注意を

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手帳

手帳
その方は通勤電車で
同時刻にいつも
乗り合わせる男性でした
メモ帳をお借りできますか
と言われたのですが
生憎メモ帳は持ちあわせていませんでした
全く知らない方でもないし
いつも会えるのだからと
仕方なく
私は手帳をお貸ししました
さっき買ったばかりです
まだ白紙です
これをあなたにお貸ししますから
今度会うときお返しください
と 言ったのに
あなたは手帳の一番始めのページを
キスマークだらけにして
汚してしまった
間のページは私の裸像画の散乱
最終ページに
あなたの捺印
 
私は栞をはさんで
「謹呈 私の全て」
と 書いた

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赤い部屋

赤い部屋
微睡むことさえ赦されない
赤い電灯の下で
君の舌を引きづりだし
僕は口腔から僕を入れる
開かれた四肢は朱に染まり
君の中の僕が脈打つ
キャミソールドレスから
爪先から
唇から
肌から
はだけられ
晒された全てから
鼓動が脈打ち
君はピアノの鍵盤の響きに合わせて
流動体の赤血球を泳ぐ
蛇の館に一人
囲まれたカナリアは
泣き顔は見せず歌うだけ
湿ったのは這わせた指先ではなく
遠い雨の日の赤紫のアイリスの芯
誘ったのは君
暴きだしたのは僕
二人が赦していたのは
欺瞞と虚飾の愛の調べ
だから火を点けないで
薄闇の天井に
ポツリ酸素を請う
赤い電球の色彩のままで
独りぼっちの
暮れない夜の
過ちの朱印
文字のない部屋
空っぽの鳥籠
安らかな黒い柩
赤い孤独が滲む部屋

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傷口から媚薬

傷口から媚薬
躊躇い傷 隠していた
汚れた包帯をひんむいて
いっそうのこと
傷口に煙草の火を
押し付けて
本当の哀しみの痛さと
熱を教えて欲しい
今夜のバーの
サックスの音色は
胸に滲むから
煙を吹き掛けて
曇らせた
バーテンダーは機械仕掛けの昔のあなた
タイムスリップして
ストリップした私の胸元に
テキーラを流し込んで
これが今夜の代金引換だよと
にやつきながら
一緒に踊って欲しい
あなたのリズムで
私は踊る
くねる
歪み喘ぐ
喪失する楽園から
覚醒した朝
腕枕の固さの代賞に
ひとこと
「女」
と呼んで欲しい
私は、あなたのの鋭い声と
目線が好きで
あなたの胸に口紅で
赤い蝶を描く
汚したシーツ
泳ぎ着かれて果てた
野良犬たち
叱るように愛して
石榴を割って
突き上げて
傷口から始まるロマンス
約束の海
潮の薫りが満ちる部屋

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灯す

灯す
月が空にひとつぽつんとしかない嫉妬に
青い火ひとつ
潮が渦を巻くくらいの感情の高浪に
赤い火ひとつ
四葉のクローバーを見つけても
三葉にしてしまう天の邪鬼に
緑の火ひとつ
生きているのは
何処かに産み捨てた人いる十字架に
金の火ひとつ
誰しもそれぞれが背負う
街並みの灯りと路地裏の陰
歩いてゆく
歩いてゆく
ひとりにひとつづつ
呪い
ひとりにひとつづつ
故郷
泣いてしまえ
スマートなスーツも
ブランドのストッキングも脱ぎ散らして
ひとりに一箱つづつ
分け与えられた
マッチの火を
今夜だけ点けながら
マッチ箱が
空になるまで
コトバを交わす

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惜春

惜春
シーツの海に住み着いた赤い蝶が
羽化したサナギを嘲笑い
自由に飛んでいく頃
海辺で泣いていたのは
溺れた人魚
帰れないお伽噺に
還りたい
アスファルトにアカイハナ
が咲くと
潮風の匂いが異国の涙を
誘うだろう
アカイハナに赤い蝶
潮騒には裸脚
同じゆらめきの果てに
楽園と廃園の鍵は
差し込まれて
血を流しながら闊歩する女の
渦を巻く激しさに染まる街
たまゆらの音色に委ねた
ピアノの旋律のさざ波
ゆれる
ゆれる
ゆすられる
楽園は近々廃園に
戻ることを
知るだろう

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