桜並木の門をくぐりたがる胸は
薄紅色の血脈が身体から飛び出し
誰かの内で鼓動が響き合う
桜の花びらが散って腐敗していく頃
土足で踏みにじる運動靴は
汚臭を発する
太陽が焦がれる高嶺の花は
異常気性なうえに
当たらない天気予報のように
いつも気まぐれ
桜の葉が汚濁にまみれ
排水溝に溜まっている
伸びすぎた前髪と後ろ髪
もっと綺麗に整えたくなった
サロンに行く途中のコスモス畑は
色鮮やかで目移りせずにはいられない
桜の木の静かな心音を吹雪がかき消す
雪が続くとまた春を振り返りたくなる
思い出が美化される
海綿状だけ見ていたい
桜の蕾が少しばかり紅色に染まる頃
ぬるくなったこたつから這い出て
来るべき春の扉のドアノブに手をかけたとき
台所の机には
冷めきってのびたしょうゆラーメンと
長持ちしすぎた蜂蜜漬けの梅干しが
残っていたので
泣きながら食べた

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「お前は私が背負う十字架だよ」

おまえは私の十字架だよ」
九十九神が居座る前は
枕草紙に出てくる親王が
我が名字
血筋の正統性は平にして
人が為
先祖代々独りが出家
永平寺にて阿闍離に為れる者もありやなしかと
聞き入りし祖母も
また
我が病の願掛け札を枕の下に
弥勒になりし 今
雷雨 吹きすさぶが如くに
父 深き因縁にて
罪悪人中の凡夫に導かれ
誤算の無一物を
まことしやかに信心し
有り金を使い果たし
母を怒鳴り
母は私に言葉にて
業をにやす
我 手首にためらい傷はしり
愛を乞うて
池にて入水
されど
天の雨の囁きか
一陣の風の御手に掬われ
我が身は白き部屋にて
隔離されし日もあれど
己が 病は進行し
また老いし父母も
手遅れの因縁に
命幾ばくもなく
最後に伝えられし
先祖から母へ伝言板
「お前は私たちが背負う十字架」
也やと

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雷雨のあとで

雷雨のあとで
空が割れて
雷様がおこっていらっしゃる
親父も怒ったので
気が炎に触れた
家をでて稲妻に撃たれる恋を探しに
出たけれど
ファミレスの牛の哀しさ
酸性雨に球体が涙
電撃が走り
いてもたっても居られず
夕立ちの空を見上げれば
ほら
瑠璃色の世界に

瑠璃色の地球に

ライブな生き方に

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雨漏りと青空

雨漏りと青空
しとり しとりと
落ちてくるのは
誰の哀しさ
夕立の激しさを
期待した子は調子狂い
洗濯物が乾かないわと
奥さまは超不機嫌
それでも
静まってゆく雨粒が
バケツいっぱいになる頃
筒抜けた青空の形は
焼きたてのメロンパン
のような
ホカホカの優しさを
私に見せた
男と青空に大切なのは
どうも
「優しさ」
らしい

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「私が花と認めるのは桜だけなの」
そう嬉しそうに語る貴女
「花雲 上弦のの月
    人形と為れる私と遊んでよ貴方」
と桜に酔いしれる貴女
「貴方に愛されているから私は自分を愛しく想えるの・・・」
と 真っ直ぐな瞳を向ける貴女
------そんな貴女を僕は裏切り御都合主義の神の手を取り
   貴女を捨てた
貴女は泣きなら僕に
「思い出をありがとう」
と言って微笑んだので
一生僕の中で
美しいまま咲き続けるのだろう
僕は春の雨の中
泣き叫び
貴女の化身である満開の桜の木の下で
罪の重さに跪き
貴女を求めて慟哭し
動けなくなってしまった
願わくは満開の桜よ
その根で
僕の血脈を吸い上げ骨を砕き
僕の血をその花弁のごとく
儚く散らしておくれ
雨に濡れたその一片が
あの人の薄紅色の唇に
触れるまでに・・・

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サクヤコノハナ・ トワニ

サクヤコノハナ・トワニ
割く闇 桜
傀儡が 紅
夜想に 闇
焦がれ 恋
残した 望
羽音を 波
凪えぎ 泪
灯す悲 友
環に枷 吾
匂う華 庭

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溺愛

溺愛
おんぼろな音がするバイクで
ぼろぼろでボローニャに行こう
レコーダー連日終夜止まらせず
天気予報はてんであたらずじまい
留守番人はルームでおくつろぎらしい
老い
惚れ
連夜
点描の
ルミネを描く

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 KISS WILL KILL ME 

KISS WILL KILL ME
苦しくて空気を乞う
血が滲み地に落ちる
連れてて疲れ果てるまで
獣が啼く今朝の夢
出てて君でなきゃ私
遊んでる貴女に悪戯を
夜想深く約束破りそう
目指すの名誉のない国へ
天使の翼天使の羽ばたき
これはね恋の為せる業
牢屋で寝ろと主は乱れ
紫陽花と紫陽花の微熱に
手には刃掌には孤独

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心象風景/欠けた器

心象風景/欠けた器
みんながみんな口を揃えて
いうのです
「死ねよ」
と。
母親は哭きながら
お前は私の背負う十字架だといい
父親は金をくすねて出ていきます
弟は無関心なまま明日の仕事の見積書と新妻の機嫌とりに夢中で
私のアイデンティティーは
錆びれた空の彼方の人から
無に還れと欠けた器を
投げつけてきました
ひび割れたお椀の中から
私の薄っぺらなイデオロギーが滴り落ちて
砂塵に回帰せよと
形あるものたちが叫びながら笑っています
お椀の中から立ち上る悪臭は私の精神で
夢の島にたどり着くまでに
一目
自分の顔を
薄汚れたお椀にに盛り付ければ
あとは要済みです
あなた方の信仰する神は
沙羅双樹の枝で編み上げた中に
慈愛を注ぎ込み高みへ導くでしょうが
スクラップになる私の赤茶けた役立たずの欠けた偏屈さには
ゴミ処理場が
私の極楽浄土だと指し示し
くすんだ空の海原を映した
器が 私の内でも
空の彼方の人と同じ声で
繰り返し 繰り返し  
波紋を投げかけます
「死ねよ」
と。

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近寄りすぎると
重くなる
離れすぎると
消えてゆく
一滴の雫
詩と死の間に
流した涙が
騙し絵のコップに
泣いた顔と
笑った顔の
中間値で
現れるオアシスを
一体誰が責められようか
より多くの毒杯に
酔った者が
背負う儚い輝きたちを

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