蜜指

蜜指
蜜指
決して美しいとはいえない私の短い爪に
貴女そっと火を灯した
じっと していて…
それは魅了の呪文
ローズパラダイスに染め上げらた私の指は
淡い水色の携帯の上でも
貴女の独占欲が自己主張する
マニキュアに温度が
指先に恋が
呪縛に艶が
あるなんて
思いもしなかった
なんて鮮やかな執着
この指で今夜も貴女に触れるのに
貴女は全てを知っていて
私を禁断の園へ誘う
禁じられた遊戯に弾かれて
貴女はどんなふうに踊るのだろう
指先には枷
染めあげたのは
鮮やかな夢の夜
薔薇色の爪は温度を保ち
私に花園の鍵を与えた
今夜も…花が…咲いてしまう…
あいくるしい花が
夜露に濡れて
焔のような雫を指が
絡めるだろうか

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澄んだ空のかたわらで

澄んだ空のかたわらで
>澄んだ空のかたわらで
貴方は夕暮れまえの
澄んだ空のような哀しさに
言葉を連ねて
独房で小さく笑っている
涙のようにあふれる貴方のメロディーに
多くの人が救われていることも知らずに
秋空に影を落とすのびない電柱
本当は
どんな時だって大丈夫なんだよ
夕焼けに染められて赤く想いを馳せてもいいんだよ
ちゃんと月がかたわらで
貴方の秋空の暮れゆく淋しさを照らしているから
安心して
その翼を恥じないで
天上の高さを謳いつづけても
誰も貴方をせめたりしないよ</span

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紅葉狩

紅葉狩
戸隠(とがくれ)の國 鬼女(ヒメ)紅葉(くれは)
崇められたる妖力と匂い立つ美貌の持ち主
平(たいらの) 惟茂(これもち) これを愛す
嵐の夜に恋は姿を現し 桜(はな)は乱れ散ることを知らず
酒瓶(さかがめ)に底なし 月は望月
躯(からだ)の熱は冷めることなく 閨(ねや)の夢もまた然り
操るは紅葉の舞い 惟茂の気色(けしき)
指を絡めて二人は狂い
薄暗がりで互いを悟る
淫猥な夢にうなされ
宴で煽るは 美味の毒杯
愛の言霊(ことだま)は 日月の輝きの如く火焔(ほむら)を放ち
花は華となり  艶やかに咲き誇る
真実(まこと)の愛は 鬼女(ヒメ)を比女(ひめ)に変え
紅葉殺める短剣は 底なし沼にて
愚者の恋の理(ことわり)を笑う
美酒(うまざけ)は尽きず 花は枯れず
かくて 紅葉狩(もみじがり)の幕は下りず

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所有者

所有者
財宝の煌めきは永遠
あなたのそのうわずった
欲情の声の破片
白い箱の中が
あなたで満たされた
乳首を噛んで
ナイフの切れ味を試したい私
あなたが溢れると
わたしは濡れる
あなたが狂うと
わたしは悦ぶ
暴きたい 暴かれたい
私の全身全霊を捧げるから
あなたを覚えさせて
違う二人に混ざり合ったなら
その煌めきが遠ざからぬよう
匂わせて
囁く声
意識の混濁
溢れる蜜と苦い水
こわれる時間
壊される精神
さぁ
手をついて
焼き印を捺されるのよ
これが所有者の証
私はあなたを戻せない
あなたは私を戻せない
永遠に煌めく宝物
誰にも渡さないわ
今更そんな声で
誘わなくても
私が 所有者よ
安心して眠りなさい

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鏡と恋

鏡と恋
言の葉の呪縛に恋は悲鳴あげ鏡は散華の血の跡を笑う
はだけたる浴衣纏える君の胸花弁の聖痕消ゆることなし
鏡割りアリスに会いたい悲願なの白き兎は今日の生け贄
海底を指でなぞれば石榴味君の傷口毎夜疼けり
鏡の間虚構の先の真実を我に教えよ叫ぶも欺瞞

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首輪

首輪
貴女の乳白色の肌が
白い陶磁器になる古城
鼓動を奪われ
口唇からは渇いた声
覚えたてのおねだりのポーズをとりながら
熟れすぎてたぎった舌を差し出した時
私は微笑しながら赤ワインをその胸に滴らせた
愛玩物の哀願の表情で
錆びた教会の十字架に背を向けたまま
私たちは祭壇で獰猛に交尾し
所有の刻印を
身体中に散りばめた
月が七度巡っても
飽きることなく
お互いに貪り続けて、廃墟の風景に鮮色をおとした
嘲笑いながらキリストの血を飲んだのは
余りにその食感が
貴女の性器に似ていたからだ
人間に生まれ感情を憎む貴女よ
ならば、ここで再生し私の鳥籠の中でだけ啼けばいい
囚われ人の優越と
夜の悦楽を捧げよう
まずは貴女に似合う
黒皮の重い首輪を裸体に纏いたまえ
染み込む汗と涙と唾液が愛証の印
首輪は
貴女の自我を締め上げ貴女は美しく覚醒する
気が狂うほどの法悦とともに
いづれは四肢全てを拘束し
私だけのビスクドールに作り替えてあげるから
今は素直に 言えばいい
誓いの首輪の世界に飢えていると
光の眩しさなど もういらないと

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嫉妬の花語り

嫉妬の花語り
黄色い薔薇は
饒舌で
黄色い薔薇は
コトノハ使い
黄色い薔薇の言霊は
塞いだ耳にも木霊する
黄色い薔薇を
贈りたくて
僕は樹海に入り込む
黄色い薔薇の棘にうなされ
未来はいつも試される
黄色い薔薇が
魅力的で
僕はぼくの花を喪う
黄色い薔薇が
眩しくて
羨む僕の背伸びを
笑う
黄色い薔薇は
今日も咲く
何食わぬ顔して
明日も咲く
黄色い薔薇は
枯れない造花
僕は生気を亡くした
切り花
黄色い薔薇は
僕の真ん中を
嘲笑う
未来永劫
嘲笑う

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野良犬2

野良犬2
踵の取れたパンプスで
町を闊歩することには
慣れていた
生き抜くために必要なのは
きつめの香水(プワゾン)と
残飯めいた男漁り
そして心に降る長雨の
憎らしさ
夢見がちな彼氏のことなど
もう忘れた
おとぎ話に飽きたから
破瓜の痛みを彼の部屋に置き去りにしたまま
初花はちっぽけに散った
いつもその傷口が疼くのは
そこから
社会に唾を吐きたいからだ
永遠の無敵のチュウができる人
どこにいるんですか
私は神様のような人を
探して
探して
命がけで探し続けていたので
さまよいの果てに甘い砂糖菓子
笑顔ひとつでくれたあなた
浸透していく温もり
あなたの声で
神様に抱かれたから
幸せな野良犬に墓などいらない

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悲哀

悲哀
君の哀 詠う帰燕や 嘘一つ

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文字呪縛

文字呪縛
傍らで眠り惑える霞み目に悩める君の愛しき横顔
机固く筆重く嘘偽りの呪縛にかかり
口角をあげて笑える女狐に夢にうなされ未来は見えず
音もなく言葉少なくうつむきてあなたは紙の上の旅人
囚われの王子さまは文字の中愛の呪文は未だ聞こえず
「ジャン・コクトー」名言の「嘘」につきセックスしあう二つの論は

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