肖像画

肖像画
薔薇
旅立つ
貴女の為に
何か贈ろうと思って
花屋に行ったら
赤薔薇一本350円もしやがるねん!
よって
一番廉価な家にある
ピンクローズを
百均の色鉛筆で七色に染めたった
どない?
あの日の「虹」みたいな花になったやろ
私は貴女の顔も姿も
見たことがないけど
これが貴女の肖像画
私が描いたんは
貴女の姿やないで
貴女の心の形と色や!
手土産に
一本だけの特別製を
もろてくれ!

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恋をすると夜が長くなる
早く朝にならないか
あの人が遠くに行かないか
確かめたくて
朝日を手に入れたがる
夢があると夜がうっとうしくなる
閉じ込めた情熱を
仲間と分かち合いたくて
行きたくもない学校が
宴会場になる
夜は私を哲学者にする
とまらない思考回路は
頭蓋骨をはみ出して
一人歩きする
うつろな目で見えるビジョンは
夜が訪れる前に夕焼けに照らされた男の顔
土手に座ってひっそりと血の涙を流していた
私の上にも
あの男の上にも
等しく夜はやってくるだろう
漆黒の大いなる翼に抱かれて
二人とも死体のように眠ればいい
暗闇にやさしさがあるのなら
明日は滅びの笛が聞こえるはずだ

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接吻

接吻
一室が3畳
病室のカーテンに君を閉じ込め
ピュア・プアゾンの香を秘めた
その胸に触れながら
そっと引き寄せた
寄り添う胸の狭間
鼓動強く鳴りやまず
色は濃さを増し
半開きのサーモンピンクの唇から
零れる視線から
奪われることを
哀願する君の姿態
喉の奥の嵐を
僕の唇から君の体内(なか)へ
想いごと押し込めた
言葉のない
午後の病室
苦い液
鬩ぎ合う甘い蜜
悲しみの雫一粒
満ち充つ「病の味」</span>

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ドア

ドア
誰しも人生に迷ったときに限って
目の前にドアが現れるのです
そのドアの向こう側に出れば
多分、あなたは助かるはずです
しかし
そのドアは絶対押しても引いても
開かないでしょう
もちろん力尽きて
もたれてみても
開かない
どうしますか?
缶詰も水もお金も才能も
恋人の命も恋心も愛情も
底を尽いてきましたよ
ヒントを与えましょうか
私はあなた方が
詩人や物書きであるという前提で
この謎を述べています
もう開け方はわかりましたね
自分で書けばいいのです
そのドアの真ん中に
自分の字で
「入口」か「出口」かを

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てのひら

てのひら

簡単に嘆くことよりも
喜ぶことを覚えなさい
死ぬことよりも
生きることを学びなさい
世界は君が思うほど
怖いものではないのだから
泣きじゃくる私の頭を撫でる手は
優しいぬくもりを帯びていた
あなたの唇から説かれた生命(いのち)たちが
春の日だまりの中目覚めるので
私はこみあげる涙をおさえきれない
春憂いのせいだよと
叱ってください
通過点の一つだと
笑ってください
でなければ求めてしまう
木漏れ日のような
あなたのてのひら

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コギト

コギト
若者が 
焚きつける炎の中に
言葉を投げ込むのは何故だ
  それは若さという火種
  誰もそうだったように
  お前もそうやって生きてきたんだろう
甘い声で囁く悪魔
駅前のバス停から 吐き出される
鈍い光を放つ革靴達の群れ
  あれは監獄へと向かうのだよ
老婆は北の地を指差して笑う
朝の来ない独房で
君は私が何をしているか知っているか
毎晩見知らぬ美しい裸体女を糧に
苦めのパイナップルジュースを搾っている
  湿った熱を握る
  ソレの為の手のひらで
  恋人の肩を抱き寄せるのよ
そう嘲笑うのは
練乳まみれの グラビア雑誌の熟女
では泥濘の地でも踏み締めて立つ
揺るがない真実はあるのか
私が問うと 私の中の神(わたし)が答える
それは考えるお前
コギト・エルゴ・スム
(我思うゆえに我あり)
それがお前の生きている手ごたえ
それがお前の生存許可書
それがお前の思想の足跡
私の内で脈動する
性と死と春の

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くれない

くれない
まどろみの穏やかさを割いて
昼寝の僕を急き立てるのは
水色の携帯
「あなたのくれた薔薇が今日咲きました。香りが凄く高いの、それでね・・・、あんまりうれしいから、花びらを一枚食べました。」
嬉しそうにさえずる小鳥は
僕のあげた薔薇の花弁を一枚食べてしまったらしい
そうやって僕の薔薇は育つ
彼女の中で育つ
それは僕が梳いてあげる髪となり
それは僕が吸う乳房となり
その奥で流れる紅さと鼓動となり
僕の体液も渦を撒いて彼女に満ちる
そんなにいいものか
僕は庭の隅に晴れやかに咲く
ピンクローズ一本にハサミを入れると
部屋に持ち帰り茎に沿って葉を切り落とす
次に棘を抜き取る
茎一本に重々しい冠をつけた女に
僕は彼女を重ねる
寝室で浴衣から白い体をはだけて
僕に全てをゆだねきった
健気な女を思い出す
僕は彼女の最後の冠(とりで)を優しくひきちぎると
サディスティックな欲望が正当化される
恥辱の香を放ちながら
一枚一枚と着脱される彼女
見られて怯えながらも求め続ける
彼女の潤んだ目を思い出す
僕にしがみついて
赦しを請いながら
啼いて悦ぶ彼女の海底(うみぞこ)
指を這わせて
あやつった夜
爪弾く僕の指先
泳ぐ体
壊れた時間
狂いかけの彼女
くれないに染まったふたり
薔薇の花びらを全部ひきちぎった時
僕の指はしめっていた</span

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愛は風化する

愛は風化する
君に何度も「愛している」「必ず幸せにする」
と、言っていたのに
僕は、今日死ぬ
君への愛より僕のエゴが勝った日
僕は死ぬ
空虚感に襲われた街で
遺言状をばらまいたら
「チンケな広告なら間に合ってるよ!」とのあざ笑いが
頭上のカラスの糞と一緒に落とされた
聖人が
「地上に不必要な人間などいないのです。」
と、語るその名言こそ不必要
そんな言葉を鵜呑みにしたら
ダラダラと煩悩の数だけ生きてしまうよ
坊主とて女遊びをする時代
気楽にそれを冗談にできるボキャブラリィなど
僕は持ち合わせていなかった
君に
「僕は、今日死ぬから」
と伝えると
「一緒に死にたい」
という
多分それは、予想していた答え
情死に3回失敗した三文物書きみたいにはなりたくなくて
「僕の息の根が止まるのを確認してから、君は死ぬんだよ。」
と、お願いすると
君は美しく笑って小さく頷いた
できれば僕の死体が無様であることを祈る
君に死への恐怖が訪れることを
僕への愛が嘘っぱちの空っぽであったことを
この猿芝居は一人舞台だったと
弱虫の僕が強がって飛び降りたグランドキャニオンの奈落の底
そこから僕には記憶がない
ただ君が、僕の知らない誰かの横で
花のように笑っていてくれたらと思う
遺言状は漫才のネタになるが
僕を、ねぇ、もし僕のことが
君の中で風化するなら
僕の肉体が砂塵になり
君の目に入った時は
「あれ、なぜ、泣いてるのかしら?」
と、彼氏の前でおもいっきり笑って見せてくれ
激しい蜜月の形見を弔いに
愛は虚空を彷徨い続け
やがては
思い出と共に風化する 

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閉ざされたアトリエ

閉ざされたアトリエ
                             
呪文は「花に毒薬、姫にヘビ」
 助けに参りました姫、私は隣国の王子、名はヘビと申す者です
 こんな閉ざされたアトリエで、貴女は何を描くのでしょう
 こんな光も射さない暗闇で貴女は何を描けるのでしょう
 家老の者たちが外の世界を遮断したのですね
 姫、私は外界の美しい色をしたものたちを知っています
 私は地を這う者です
 姫、貴女に足りないのは色です
 花には水が必要なのです
 貴女が知りたがっていた外の色を貴女のなか体内へ入れてご覧にいれましょう
 さぁ体も心も私にゆだねなさい 麗しき幽閉王女よ
 では私を飲み込むのです
 何を恥じらうのですか
 姫ともあろう方が怖いのですか
 赤黒い細い舌先でくすぐられただけで花弁がふるえていますよ
 さぁは挿いりますよ
 鱗がこすれるのがたまらないのでしょう
 そんなはしたないお声をあげて 啼きながらうれしがって
 貴女はよほどこの時を望んでおられたのですね
 私が貴女にお教えする色は甘美な毒と蜜の味
 この味を知ったなら このアトリエは無用の城壁
 もう絵など描かなくても良いのです
 ただ私と交わり混ざり合い 一つになる快楽を求めるままにむさぼるのみ
 天上の姫、地上のヘビ
 決して触れ合うことのない二人が突き上げ突き堕とした毒のなか胎
 さぁ合い言葉を
 ふるえるその清らかな唇から、淫猥なる至上のうた詩を!
 「花に毒薬、姫にヘビ」
 かくして暗闇に一条の光が射して
 薄汚いキャンバスには艶美に狂う蛇二匹
 千年来世の夢を見る

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おとぎ話

おとぎ話
僕は君を失ったらきっと狂うよ
オフィーリアの意識が浸透してくるベッドの中で
僕は夢見心地で君にささやく
「狂ってから、死のうか」
貴女のいない世界に一人
生きる強さが僕にはない
それではあなたを食べてあげましょう
彼女は言う
一生懸命一片の肉片も残さず
食べてあげるわ
「女郎蜘蛛」だね
あなたが言ったのよ
私のことを「けなげな女郎蜘蛛」だって
じゃあ、僕は食べられちゃうんだね
そうよ、あなたは誰からも好かれるから
誰にも渡さないの
重いな・・・君の愛は・・・
でもそれくらいの重い枷が
僕には丁度いい
でも食べたその後は?
そうね
あなたを身籠るわ
他の誰のところにも転生できないように
そして身籠ったその後は?
あなたを産むわ
そしてあなたは私に恋して
激情の果てに壊れればいい
壊れて死んだその後は?
また食べるのよ
素敵だね
素敵でしょ
そう笑い合いながら
僕は再び彼女の体に滑り込む
彼女は幽妙な海底
現世(うつしよ)から色情の恋獄に僕を繋ぎ止め
味わいながら巧みに踊る
もう僕は戻れないほど溺れきっているのに
彼女のおとぎ話は終わらない

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